意外に知らない!? 子どものカラダの夏の危険|東京児童協会

東京児童協会が運営する保育園には、〝たのもしい存在〟がいます。それは、保育園看護師の先生です。運営する22園中、0歳児クラスのある19園すべての園に、看護師が配置されています。保育園では医療行為はできませんが、専門知識にもとづいた適切な判断で、日々、園児たちの異常の早期発見に努め、園全体の子どもたちの体の安全を守っています。

今回は、園を超えて8人の保育園看護師の先生に集まってもらい、「夏の危険から子どもの健康を守る方法」について、お話を聞きました。夏の危険というと真っ先に思い浮かぶのは熱中症ですが、今回のテーマは、親でも意外に知らない、けれども保育の現場ではよく見られるトラブルについて。ご家庭でも、ぜひ参考にしてみてください。

日焼けは〝やけど〟の一種‼ あなどってはダメ


よく「子どもが日焼けで真っ黒になった」という話を聞きますが、看護師の視点で言えば、これはかなり危険な状態! 日焼けという言葉から軽く考えられがちですが、日焼けというのは、じつは熱傷といって、やけどの一種。症状によっては、病院での受診が必要になる場合もあります。日焼けは、肌の変色だけでなく、かゆみや痛み、水ぶくれ、湿疹、さらにひどくなると、倦怠感、発熱、嘔吐、頭痛、脱水症状などを引き起こす、危険なものです。そもそも日焼けをした時点で、子どもの体力はそうとう消耗しています。

実際に、保育園でも、お休みの日に海水浴に行って真っ黒に日焼けした子どもが、休み明けに登園してきたものの、ご飯は食べられない、活動もできない、午睡ではやたらと眠って、ようやく起きたと思ったら、熱を出す、といったようなケースがよく見られます。看護師としては、「日に焼けたね」ではなく、「やけどを負ってしまっている」と見るわけです。

日焼けだといって軽く見ずに、日焼けをしたと思ったら早めに冷やす。そして、火照りが治まったらローションなどで保湿をしてあげてください。


また、普段より水分を多めに摂らせてあげましょう。できれば子ども用のイオン飲料が望ましいです。食欲がない際には、飲み物だけでなく、ゼリーなどのど越しの良い水分の多めの食材で補ってあげましょう。

そして、元気がなくゴロゴロしている、体が熱いという場合は、炎症によって体力を奪われていたり、体内に熱を持っているということなので、保冷剤などで冷やして、しっかり水分を摂らせて休ませてあげることが大事です。

子どもを襲う! 地面からの照り返し


紫外線によって受ける影響は、だれでも同じではなく、じつは年齢によってかなり違います。とくに0、1、2歳児は皮膚がとても薄いので、紫外線から受けるダメージが大きくなります。そのため、兄弟で外遊びをしたときに、上の子はまったく平気でも、下の子は熱を出してしまうということが起こるのです。

さらに、日焼けというと、つい頭上からの光ばかりを気にしてしまいますが、子どもにとっては、地面からの照り返しも、脅威なんです。幼児は、大人よりも身長が低い分、地面からの影響をもろに受けてしまいます。実際、大人の目線の高さと子どものそれとでは、体感温度で2~3度違うと言われています。大人が暑いと感じるとき、子どもにとっては、焼けるように暑いということもあるのです。

なかには、ベビーカーで日よけをしていれば安心と思って、子どもをベビーカーに乗せて長時間お散歩に出かけるる場合、ベビーカーも地面に近いので、アスファルトからの照り返しで、日焼けや熱中症を起こしてしまうのです。

保育園での日焼け対策


近年、地球温暖化の影響で、昔とは比べものにならないくらい、紫外線によるダメージが深刻です。日焼け止めを塗って対策しているという家庭も多いと思いますが、保育園には、いろいろな肌質の園児がいるので、基本的に、園では日焼け止めを塗っていません。

しかし、保育園では、暑くなり始める6月頃から、環境省が出している『暑さ指数』を毎朝チェックし日中の活動内容を決めているので、日焼けトラブルはほとんどありません。指数によって、外遊びの時間を短縮する、涼しい時間帯にずらす、取りやめるなど、毎日、臨機応変に対応しています。そのほか、園児たちが、直射日光に当たらないよう対策をとっています。たとえば、園庭のある園ではシェードを張って影をつくる。お散歩や外遊びのときは、必ず帽子をかぶり、薄手の長袖で肌の露出を抑えるなど。

ご家庭でも、日焼け止めに加えて、このような対策を取り入れることで、日焼けによるトラブルはさらに軽減すると思います。

保育園での虫よけ対策


虫よけは、保育園では基本的に塗らないのですが、塗る場合は、製品を保護者に事前に掲示し、了解を得てから使用しています。

肌のバリア機能が未発達の幼児は、虫に刺されたときに反応が強く出るので、園では園児たちができるだけ虫に刺されないように、虫が寄り付かない環境をつくるようにしています。外遊びのときには、虫がいそうな場所にあらかじめ忌避剤をまいたり、保育室内では子どもの手の届かない位置に吊り下げ式や置き型の虫よけを配置しています。

皮膚トラブルを未然に防ぐ、汗のケアと肌着の効果


夏の保育の現場で日常的に起こるのが、湿疹、あせも、とびひといった皮膚トラブルです。原因の多くは〝汗〟。汗をかいたけれど、それをちゃんとケアしなかったために、あせもだらけになり、さらにそれを掻いてしまってとびひができる、というのはよくある話です。

汗腺がふさがれてしまうと、炎症が起こりやすくなるので、汗をかいたら放置しないで、必ず拭き取って、ばい菌の繁殖を防ぐことが大事です。園では、気候に合わせて清拭やシャワー、沐浴を行ない、皮膚の清潔を保っています。さらに、手洗いのときには、手先だけではなく範囲を広げて洗ったり、汗っかきのお子さんのお昼寝では、保冷剤を首の下に入れて、体を冷やながら寝かすといった工夫をし、皮膚トラブルの予防に努めています。

さらに、〝肌着〟も重要! 2枚着せるより、1枚の方が涼しいだろうと、肌着をやめて、Tシャツだけにしがちですが、実は子どもは着る利点が多いのです。涼しさは、空気の層ができることで生まれます。肌着を着ていることで、熱がこもりにくくなります。また、汗を直ぐに吸収してくれるので肌トラブルを防ぐ効果もあります。今は速乾性のある衣類も増えてきています。肌着の使用と上手に使い分けて選んであげてください。

汗をかかない子にするというのは、体には危険なことです。汗をかかない子にするのではなく、汗をかく子を、いかにケアしてトラブルを予防するが大事です。

天然成分100%にも、注意が必要


化学薬品や化学製品は子どもに使いたくないけれど、天然成分なら大丈夫だと思っている人もいるかもしれませんが、子どもにとっては、天然成分だからといって必ずしも安全というわけではありません。天然成分でも、肌が薄く、機能が未発達な子どもにとっては刺激が強いものもあるので、そこは気をつけたいところ。

たとえば、アロマオイルを虫よけに使ったり、肌のケアに使ったりする人もいますが、注意書きをよく読めば、3歳未満の乳児・幼児への使用をしないよう書いてあるものもあります。3歳以上の子どもであっても、かなり希釈して使うことをおすすめします。天然成分だから安心だとは思わないで、説明書を必ず読んで、子どもの肌に合っているのかパッチテストなどで確かめたうえで、使うようにしてくださいね。

 

お話をうかがったのは……

加藤看護師(足立区・扇こころ保育園)
川上看護師・森看護師(墨田区・すみだ中和こころ保育園)
久保田看護師(墨田区・ひらがなのツリーほいくえん)
瀧澤看護師(中野区・なかのまるのなか保育園大きなおうち)
土屋看護師(墨田区・すみだ川のほとりに笑顔咲くほいくえん)
藤井看護師(江戸川区・葛西大きなおうち保育園)

ONE ROOF ALLIANCE ワンルーフアライアンス

ONE ROOF ALLIANCE ワンルーフアライアンス
現在、都内22の認可保育園と認定こども園を運営する「社会福祉法人東京児童協会」と、企業主導型保育園や学童保育の運営、海外への保育事業を展開する「株式会社ONE ROOF」が主体となり、新しい子育て社会を実現していくネットワークです。