都内に22の保育園・こども園を運営する東京児童協会が日頃から力を入れているのが「食育」。各園に在籍する栄養士は、栄養バランスを考えた食事を提供するのはもちろん、積極的に保育に参加しています。
今回は、同協会の栄養士に「食に関して保護者から多い質問」に回答いただきました。
目次
食べる量が少ない、食事に時間がかかるときの対処法は?
量を少し減らしつつ、子どもが集中できる目安の30分という時間を設けて、あくまで食べ切れるだけの量を提供します。本人が満足しているなら、量を減らしてもとくに問題はありません。子どもの「適量」を知ることも大切です。
ほかの食材に比べて少々硬さのあるお肉を食べるときは、時間がかかる子どももいます。それこそ園と自宅では食材の硬さの違いなどもありますので、咀嚼する力を見てあげるといいと思います。
かといって、柔らかい食材ばかりを食べるのはおすすめしません。咀嚼力をつけるためにも、段階的に硬さの異なる食材を食べさせてあげたり、食材の大きさを大きめにしてあげたりするのもいいと思います。
よく噛まずに飲み込んでしまう場合は?
食材の大きさを少し大きめにして噛むように調理方法を工夫したり、一度に食べる量を少なめにするように促したり、一緒に数を数えながら噛む回数を増やしたりしてあげて噛む練習をしてみてください。繰り返し伝えることで少しずつ身についていきます。
保育園で提供しているレシピを教えてほしい
保護者の方から保育園で提供している食事のレシピを知りたいとお声がけいただくことが多々ありますが、そのときは都度レシピをお伝えしています。
園によって異なりますが、人気のレシピを玄関前に置いて、自由に持っていけるようにしているケースや、お便りでレシピを配付することもあります。
市販のお菓子類は食べさせていい?
基本的に園では、甘みを抑えた手作りのおやつを出していますが、とくに0歳児の場合は、市販のゼリーやヨーグルトなどは、半量にして調整するのもひとつです。
離乳期のおやつに関しては咀嚼力が発育段階の時期なので、一般的なお菓子は硬いものも多いので、やはり赤ちゃん用や低年齢用として販売されているものがおすすめです。
1歳未満の場合は、ハチミツを含んでいないかもチェックしてあげてください。
また、エビなど一般的にアレルギーが多い食材なども注意が必要です。とくにこうした食材を初めて食べる場合は、少量を与え、アレルギー反応が出ないかしっかり様子をみてあげてください。
市販のお菓子に場合は、少量の小袋になったものであれば、量をあげすぎないという点ではおすすめです。
おやつをあげるタイミングも注意してあげるといいと思います。ご飯前だと肝心のご飯が食べられないこともあるので、毎回15時にあげるなど、時間を決めてあげるのがおすすめです。休日など、定時にあげるのが難しい場合は、ご飯の2時間前までにあげるのが望ましいです。
チョコレートは何歳からあげていい?
肥満になりやすかったり、内蔵が成長段階だったりするので、チョコレートなどの甘いお菓子類は、基本的には3歳以降からを目安に、少しずつ与えるのがいいと思います。
子どもの味覚は3歳までに土台が作られますが、赤ちゃんから味の濃いものを食べる習慣があると薄味の食事を嫌がってしまったり、大人になっても濃い味を好みやすくなってしまったりしやすくなるといわれています。
食具の正しい持ち方の伝え方は?
食事のときだけではなく、手首の返しの練習になるような動きや、泡立て器を混ぜる動きなど、おもちゃを使って遊びながらスプーンの持ち方を習得するのもおすすめです。
上手持ち(うわてもち)
上からスプーンをわしづかみにする持ち方です。始めはこのまま、スプーンを持つことに慣れていきます。こぼすことも多いですが、「スプーン持てたね」とたくさんほめて、自信をつけていきましょう。食材をスプーンに乗せてあげたり、手を添えてあげたりして、少しずつ一人で食べられるようにしてあげるとよいですね。
下手持ち(したてもち)
上手持ちで食べることに慣れたら、下手持ちをするように促していきましょう。食事の始めだけなど、機嫌の良い時に持ち方を教えてあげてください。ほんのちょっとの時間でもOKです。励ましたりほめたりしながら、少しずつ進めていきましょう。下手持ちは、手首をひねることができないと難しいことなので、遊びや生活の中でこういった動きを経験させてあげることも大事です。
三点持ち(さんてんもち)
下手持ちが上手になったら、指先で持てるようにしましょう。親指と人差し指を立てて真ん中に食具を挟みます。その形のまま、スプーンを乗せてあげて指でつまむように持ちましょう。親指、人差し指、中指の3点で支えられればOKです。無理強いせずに、ゆっくりと進めていきましょう。あまり神経質にならずに、気付いた時に声をかけるくらいで大丈夫です。
食事の正しい姿勢
椅子に座って食べることで、背筋が伸びて、かつ体を固定でき、足をしっかり地面について食べることができます。その結果、しっかり顎を使って噛むことができます。
例えば、地べたに座って食べると、足でふんばって食べることができないため、体がいろいろな方向に向いてしまって、食べこぼしにつながるなど、注意力が散漫になってしまいがちです。なので、しっかり椅子に座って食べることがおすすめです。
園では栄養士に気軽に質問をして頂けるように、アンケートを取ったり、声を掛けて頂いたりしています。何かお困りごとがあった際には、是非園の栄養士にお声がけください。
お話を聞いたのは……
中島 佳香先生(葛西大きなおうち保育園)
齋藤 加奈子先生(目黒三田保育園キミトミライト)
山崎 比彩先生(神田淡路町保育園)
稻垣 有紀先生・鳥越 麻央先生(台東区立たいとうこども園)