台東区立たいとうこども園で、株式会社シミズオクト(以下、シミズオクト)協力のもと、卒園制作にプランターカバー作りに挑戦しました。本企画は、シミズオクトに勤務する保護者の前田倫子(まえだ・のりこ)さんからの提案で始まり、実現にいたりました。
プランター作りまでの道のり
シミズオクトは、イベントやコンサートの舞台美術・会場を運営するイベント業界の大手企業。業務で出た端材をなんとかリユースできないか、といった取り組みを模索していました。そんな背景もあって、同社の商品開発部門の社員でもあり、台東区たいとうこども園にご自身のお子さんを通わせている保護者でもある前田さんが、池田園長先生に相談を持ちかけたことから始まりました。
たいとうこども園では、普段から家庭から出た廃材を使って制作を行う取り組みを行っていることを保護者として知っていた前田さん。だからこそ、端材をリユースしてもらえたり、子どもたちにとって貴重な体験に活かしてくれるかも…という想いがあったそう。
こうして複数回に渡って園に足を運び、子どもにとって安全な端材のサンプルを持ち寄ったり、池田園長先生と相談していくなかで、端材を使ったプランターカバー作りの企画が持ち上がりました。
同園がある台東区では、花を慈しみ、おもてなしの心を育むための「花の心プロジェクト」が推進されていることもあって、まさにピッタリの企画です。
いざプランター作り当日!
じつは当初、シミズオクトスタッフが園で直接指南する予定だったものの、オミクロン株の感染が拡大傾向にある状況から、急遽方向転換。スタッフ不在の状況でも園のタイミングで制作ができるようにと、スタッフの方々が作り方とお仕事紹介の動画を作成しました。
いよいよ当日。まずは、シミズオクトの会社概要や、今回の企画に至った端材に関する動画を全員で視聴しました。5歳の子どもたちに理解してもらえるようにと、苦労しながらも噛み砕いたわかりすい動画は園児たちからも好評です。
企画を通して作り方だけではなく、同じ地域の会社がどんなことをしている会社なのかを子どもたちが知ることも、地域とのつながりをより感じられる大切な工程です。今回は台東区たいとうこども園だけでなく、新宿三つの木保育園でも実施しました。新宿三つの木保育園の向かいにはシミズオクトのビルがあり、園の子どもたちや保育士は見たことのある会社ロゴ。企画を通してどんな会社が地域にあるのか理解が深まりました。
プランターカバー作りの動画では、釘や金槌など、扱い方によっては危険だということもしっかり説明。さらに保育士からもていねいに、子どもたちに再度注意喚起を促します。
プランターカバー作りに必要な材料は、シミズオクトから提供された端材。子どもたちが扱いやすいように、すでにカットされているほか、組立時の目印となるようにと、パーツごとにアルファベットがふられています。
卒園制作とあって、年度と組名、企業コラボの証として双方のロゴも入っています。
先生お手製のボックスに釘、金槌が入れられて準備万端。
また、子どもたちにもわかりやすいように説明書も付属。しっかり読んで釘を数える子どもたち。
保育士が見守るなか、さっそく気合十分でプランターカバー作りに挑みます。
順番に金槌を持って釘を打ち、パーツを組み合わせていきます。カンカン、トントンと大きな音が響き渡ります。
何度も金槌で釘を叩きます。
「硬い!」「あ、曲がっちゃった!」など、なかなか釘が打ちこめず苦戦する場面もありつつ、チーム一丸となってチャレンジします。
苦労しながらも自分たちで作ったプランターカバーが完成したときは、「完成!」と大歓声です。
自分たちで記名も。これもまた思い出に。
後日、お世話になったシミズオクトさんに、園児たちから心のこもった手紙をプレゼント。当日の絵とともにメッセージが添えられています。
「すごくいいプランターができました。ありがとございました」「ちからお(を)あわせてがんばりました」「かんどうしました」など、たくさんのうれしかったことや感謝の言葉が綴られていました。
なかには、「あたたかみがかんじられるプランターができましたよ」など、大人顔負けのメッセージも!
ちなみに「ママ」でもあり、シミズオクトの社員でもある前田さんのお子さんは、「たくさん叩いたからお腹が減っちゃって給食がおいしかった!お母さんたちも“端材”をもったいないなと思いながらお仕事してるんだね」と、保育園の帰り道でさっそくうれしそうに体験の様子を話してくれたそうです。「もっとお仕事の写真が見たかった!」と、リクエストも。
実体験が子どもを成長させる
今回木材を使った体験を通して、知らず知らずのうちに子どもたちはさまざまなことを学んでいたようです。
同じ木でも硬さが違うこと、園のなかだけでも椅子や机、本棚など、木材を使ったものがたくさんあること……子どもたちが今回の体験で学んだことは数しれず。ある園児は「椅子はもっと作るのが大変そうだね」と、日常の中でふと気が付いたりする場面もあったそう。
危ないからと工具類を触らせないのではなく、危険が伴うことを事前にしっかり伝え、また側で見てサポートするのは当然のこととして、子どもたち自身に体験してもらうことを何より大切にしています。経験こそが子どもたちの成長を大きく、また心豊かにしてくれるはずです。
「モノづくりの楽しさ」や、「協力して作り上げる喜びや難しさ」、「物を大切にすること」を届けたかったシミズオクトさんにとってもうれしい報告となりました。「同じマインドを持った仲間とこの企画が実現できたことを大変嬉しく思います」と前田さん。
「いろいろな活動は目的があるものの、それ以上に“実体験”をすることの大切さをあらためて感じると同時に、質の高い教育に直結するということを今回の活動で感じて、本当に有意義な時間でした!」と池田園長先生。
今回の活動は、他のグループ園でも実施され、大好評だったそう。こうした「体験」の積み重ねは、学びや夢を育むきっかけに。
そんなさまざまな貴重な体験は、バイタリティーのある池田園長先生のもとで、きっと今後もたくさん実施されることでしょう。