都内に22の保育園・こども園を運営する東京児童協会が日頃から力を入れている「食育」。遊びと食事のスペースを分け、全園にランチルーム(食事スペース)を設けるなど、積極的に食育活動行ってきました。各園の栄養士は、おいしい食事を園児に提供するのはもちろん、日々の保育のなかでさまざまな食育活動を行っています。
そこで今回は、各園の栄養士4人に、園の献立や日々の食育活動について話していただきました。
園での献立作り
毎月の献立は、給食における年間指導計画を全園で共有し、また月の目標や旬の野菜など月間計画を基に立てています。例えば4月なら「楽しく食べよう」といった狙いで、春キャベツをテーマ野菜に、日々の献立に落とし込んで作成しています。
さらに、旬の野菜にふれることや味噌作りなど、クッキング活動も毎月の目標に基づき、これらをまとめたものを年間指導計画として行っています。
2021年度からは、あらたに郷土食も年間の献立に入れ、毎月異なる都道府県の郷土料理も提供しています。
都道府県の場所や大きさがわかる地図を紹介したり、その土地の気候や特産品など各地域の話をしたりなど、各テーマは全園共通。どういうポイントで話しをするのか、各園で園児の年齢や環境、発達に配慮したうえで行っています。給食に関してここまで細かくカリキュラムを組んでいる保育園は少ないかもしれないですね。
食材の見せ方や工夫は?
季節感のある旬の食材を取り入れることや、赤色、黄色、緑色の3色がバランス良く入るように、彩りも常に大切にしています。
子どもたちが苦手なことも多い、緑色や赤色の食材は、その食材の切り方や入れる割合を工夫しています。
具体的には、子ども達が好きな味噌の味付けにして食べやすくしたり、大好きなケーキ類に加えたりしています。また、畑の活動(栽培)活動も行っている為、どうやって育っていくのか生長過程を間近で観察したり水やりをしたり、食材の絵本を読んだりして、少しでも興味を持ってもらえるような活動も行っています。
コロナ禍前などは、実際に食材に触れる「種取り」や「皮むき」などを行っていました。自分たちが種を取った食材が、給食の献立として提供されると、食べるきっかけにもなります。
苦手な食材を子どもたちが食べられるようになることはもちろんうれしいのですが、必ずしも規定量を食べないといけないということではなく、少しでも食べてみようと思ってもらえるなど、そういったきっかけになってほしいと思っています。
また、自分が食べられる量や好きなもの、または嫌いものも自分自身で知ることも大切だと思っています。
声掛けの仕方ひとつで子どもたちが食べてくれることもあるので、そういった工夫も大切なポイントです。
子どもたちには食事前に、展示食を見て食べられる量を自分で考えたり、好きな食材だけに限らず、苦手な食材も減らしてもらいながらも、完食できる様に伝えています。
配膳に関して
コロナ禍の現在は保育士等が配膳していますが、以前は2歳児クラスの後半くらいになると、自分で下膳するところからスタートして、盛付けてもらったご飯を1品運ぶ事から始めています。段階的に品数を増やしながら5歳児クラスになったときには、子どもたちが自分たちで食事の準備ができるようにしていました。
各園の子どもの発達に併せて、最終的に小学校に進学したときに、子どもたち自身が困ることがないようにという最終目標で進めています。
各年齢の発達に合わせた食器、食具の違い
年齢によって食器、食具を使い分けています。例えば乳児の食器は、スプーンですくいやすいようにヘリのある食器や、手を添えやすいような大きさの食器を選んでいます。それぞれの年齢に合わせた発達を踏まえた食器選びをしています。
そもそも食器は、サイズや高さ、壁の湾曲具合、重さなどがメーカーに寄って異るので、実際に使ってみて年齢に見合った食器を精査し、全園に共有しています。また園だよりや懇談会等で、保護者に情報を発信したりもしていました。
スプーンや箸の持ち方
1~2歳児のスプーンの持ち方は最初は上手持ちですが、柄の太いスプーンを使用することで、少しずつ3点持ちを促し正しい握り方が安定しやすくなります。スプーンの3点持ちが安定してきた子どもは、家庭と連携しながらお箸への移行を進めます。
各園に三色ボートを配置
各園には、食材を栄養素別に記した三色ボードを作成し、赤、黄、緑に分けて日々の献立にどんな食材が使われているか視覚的にもわかりやすく掲示しています。
栄養士がその日の献立のボードを貼っていると、「豚肉はタンパク質でしょ」と、率先してボードに貼ってくれる子どももいます。こうした毎日の継続が、子供の食育に影響しているのを感じています。
東京児童協会では、食に関する媒体作りや、栄養士が子どもたちにどんな内容を話したのかなどのお便りや掲示など、保護者が安心できるような活動も行っています。遊び場スペースと食事スペース(ランチルーム)を分けていたり、栄養士と子どもたちの距離が近く、子どもたちが食べている様子を見たり聞いたりできたりなど、そういった部分はこの法人ならではの魅力ではないでしょうか。
お姉さんお兄さんを見て、箸を使ってみたいと思ったり、苦手な食材に挑戦してみようと思ったりなど、ランチルームがあるからこそ、食事のときも自然と異年齢交流ができているというメリットもあります。
お話を聞いたのは……
菊池圭先生・二本松京香先生(船堀中央保育園)
酒井珠寿先生(扇こころ保育園)
杉山夏葉先生(江東区南砂さくら保育園)