子どもがかかりやすい感染症は、風邪やインフルエンザ、手足口病などさまざまあります。そこで、今回の看護師インタビューのテーマは『感染症』。東京児童協会が運営する22の保育園・こども園の7人の保育園看護師に、感染症の現状や、「子どもが感染症にかかった!」「嘔吐した!」ときの家庭での対処法などについて、お話を聞きました。
感染症に季節性がなくなっている‼
オミクロン株の流行は保育園児にも及び、東京児童協会の保育園でも感染が報告されています。回復までに時間がかかったり抵抗力が落ちたためなのか、原因ははっきりしませんが、保育の現場では、感染症の季節性がなくなっていると感じています。
以前なら、春は感染性胃腸炎や食中毒、RSウイルス、夏はヘルパンギーナや手足口病など季節ごとに流行する感染症がありましたが、新型コロナウイルス、とくにオミクロン株の感染拡大以降は、冬の病気であるノロウイルスが夏に流行るという現状があります。
さらに、インフルエンザとコロナ、コロナと感染性胃腸炎というように、一時期に複数の感染症にかかる例もあります。
季節ごとの感染症の流行が予測できない中で、これまで以上に感染予防の重要性が増していると言えます。
また、新型コロナの流行以降インフルエンザの感染者数は激減していましたが、日本と季節が逆のオーストラリアでは5、6月に感染者が急増したことから、日本でも今年の冬はインフルエンザが流行するのではと言われています。
予防接種をすることで症状が軽く済んだり、インフルエンザ脳症の発症リスクが抑えられるので、1歳を超えたらワクチン接種を受けた方が安心ですね。
子どもが嘔吐した! どうすればいい?
子どもが嘔吐した場合は、細菌やウイルスなどが原因かもしれないので、処理をするときに注意が必要です。実は私も、家族で出かけた際に子どもが車で吐いたので、車酔いかと思って素手で処理をしたら、後日、感染してしまったということがあります。
実際に、保育園で嘔吐物の処理をするときは、保護者が見たらビックリするかもしれませんが、手袋、マスクはもちろん、防護服に身を包んで処理に当たります。
嘔吐物処理の具体的な手順を紹介しましょう。
- 嘔吐物に新聞紙などをかぶせ、広がらないようにする。窓を開ける(可能なら対面で)。
- 兄弟や他の家族を遠ざけ、一人が処理に当たる。
- 手袋、マスク、(エプロン)をする。手袋がない場合はビニール袋で手を覆い、絶対に素手で触らない。
- 嘔吐物を新聞紙などで取り除いたら、タオルなどで拭き取る。
- 嘔吐物の処理が終わったら、ビニール袋に入れ、口を固く縛る。
- 嘔吐物を入れたビニール袋を、さらに別のビニール袋にマスクや手袋と一緒に入れて、しっかりと口を縛る。
- 嘔吐物のあった場所を、次亜塩素酸ナトリウムや家庭用塩素系漂白剤などで消毒する。
- エプロンや衣服にもウイルスなどが付いているかもしれないので、エプロンや衣服に触れないようにして脱ぎ、他の物とは別々に洗濯する。
- しっかり手洗いをする。場合によっては、お風呂に入ってウイルスなどを落とす。
子どもが感染症にかかった! 家庭内で気をつけること
保育園では、二次感染を防ぐために、園児が吐物や排泄物で衣類やお布団などを汚しても洗濯をしないで、そのままビニール袋に入れてご家庭にお返しします。
ご家庭でも、家庭内感染を防ぐために子どもの感染症が疑われたときは、次のことに気をつけてください。
- 同じタオルを使わない。
- 手がよく触れるところは、家庭用漂白剤などで消毒する。
- 食べ残したものは唾液がついているので、食べないようにする。
- 食器は中性洗剤を使えば手洗いでも大丈夫ですが、食洗器は熱を加えながら洗うので、食洗器があれば食洗器で洗う方がより安心です。
- 食器を洗ったスポンジは熱湯をかけたり、漂白剤につけて除菌をする。
- 洗濯物は、塩素系漂白剤の希釈液にしばらくつける(色落ちするので注意)。または、85℃以上のお湯につけて除菌してから、洗濯用洗剤で洗濯。洗濯後に乾燥機やスチームアイロンなどで高温処理をすれば、殺菌効果が高まります。
- おむつの処理も嘔吐物処理と同様に、排泄物が体に付着しないように気をつけながら、ビニール袋に入れ、きちんと口を縛って捨てる。
- 感染性の中には、症状がよくなっても排便中のウイルスが排泄されるまで1ヶ月ほどかかるものもあるので、その間は、お子さんの毎日の便の状態を確認してあげてください。
アルコール消毒液の注意点
コロナ禍で、手洗いに加え、アルコール消毒をしている人も多いと思いますが、消毒液に含まれているアルコール濃度を意識している人は意外に少ないのではないでしょうか?
市販されているアルコール消毒液の多くがアルコール濃度70%以下のものになりますが、70%以下のものは殺菌効果があるとは言えないんです。
さまざまな細菌やウイルスに有効な消毒用アルコール濃度は75~85%と言われていて、実際、保育園ではアルコール濃度70%以上のものを使っています。
また、小さな子どもにとっては、体を守るはずの消毒液が、逆に危険なものになることもあるので、次のことに十分注意をしてください。
- アルコール消毒はアルコールが乾く過程で殺菌(除菌)するので、乾くまで触ったり拭いたりしないように見てあげる。
- アルコール消毒液をなめた子が、急性アルコール中毒になったというケースもあるので、消毒液は子どもの手が届かないところに置く。
- ご飯を食べる前に、手洗い・消毒をしても、そのあとに鼻を触ったり、口の中に手を入れたりしたら消毒した意味がなくなってしまうので、そのときは再度、手洗い・消毒をしてあげる。
- アルコール濃度が高い消毒液を使う場合、お子さんによっては手が荒れることもあるので、ハンドクリームや保湿剤で保湿をしてあげる。
- アルコール消毒液には使用期限があります。使用期限を確認して、開封後はなるべく早く使い切ることをオススメします。
お話をうかがったのは……
緒方看護師(品川区・花房山目黒駅前保育園333)
小山看護師(新宿区・富久ソラのこども園ちいさなうちゅう富久分園)
鈴木看護師(台東区・忍岡こども園)
前田看護師(千代田区・神田淡路町保育園大きなおうち)
大藤看護師(江東区・亀戸こころ保育園)
米原看護師(江東区・南砂さくら保育園)
山田看護師(新宿区・富久ソラのこども園ちいさなうちゅう)