東京児童協会が運営する保育園に勤務する現役保育士が手掛けた絵本「おてがみだいすき」(出版:文芸社/作者:夕暮サトシ/絵:ふじのきのみ)が、制作から約2年の月日を経て発刊されました。家族の絆や感動がたくさん詰まった絵本は、同園の全園児にクリスマスプレゼントとして送られました。
今回は、絵本の作者でもある保育士・永井先生にインタビューを実施、制作するうえでのこだわりや思い、読み聞かせをしたときの印象などを伺いました。
目次
東京児童協会で絵本コンテストを実施、最優秀作品「おてがみだいすき」が書籍化!
都内に22の保育園を運営する東京児童協会では、保育士の夢を叶える企画の一環として「第1回ONE ROOF ALLIANCE 絵本コンテスト」を実施。
「家族」をテーマに、全17作品が集まりました。そのなかから、出版社「文芸社」と同法人担当者で厳正に選考した結果、江東区白河かもめ保育園の保育士・永井智先生(ペンネーム:夕暮サトシ)の絵本「おてがみだいすき」が最優秀作品に。
パソコンなどデジタルが普及している現代において、自分の字で自分の気持ちを伝えることの大切さや、家族との繋がりを感動的に表現している点が評価されました
「おてがみだいすき」作者・夕暮サトシ(永井 智)さんにインタビュー!
―絵本コンテストに参加したのは?
そもそも大学時代にお芝居の脚本を書いたり、イラストを描くのが好きだったりというのがあります。
園では、毎日1時間ほど絵本を子どもたちに読み聞かせをしたり、あるときは、壁いっぱいに模造紙を貼って、クレヨン片手に子どもたちがリクエストした絵をその場で描いたり、保育士になってからはよりイラストを描くことが日常的にありました。そういったなかで、絵本コンテストを知り、応募しました。
―絵本が発刊されたときの思い
絵本に添えるイラストを自分自身でデザインしたものが、プロのイラストレーターさんによって、より温かみを感じる絵ができ、絵本に込めた意図を上手く表現していただいてうれしかったです。
また発刊にあたり、出版社の編集の方のお力添えもあり、普段自分が大事にしたいことや思いがより伝わりやすい形になったと思います。
―絵本のストーリーについて
もともと勤務している園で、絵本の主人公のように、ママと離れるのがさみしいと思っている子どもがいて、なにか自分にできることがないか、というのが絵本のストーリーのヒントになりました。
絵本では、「手紙」が“伝えるツール”になっていますが、手紙に限らず、園での何気ない様子を伝えること自体が、お父さんお母さんにとってもうれしいことだと思うので、そういった部分を子どもたちに感じてもらえたらうれしいです。
―絵本制作のこだわりポイントは?
絵本を読み終えた子どもたちが、どんな気持ちになるか、得られるものはなにか、気づきはあるかなど、着地点を考えて制作するように心がけています。
今回は、コンテストのテーマである「家族」というところに加えて、お父さんお母さんにも共感してもらえる要素である点も加味して制作しました。
―園で読み聞かせをしてみて
自分で作った絵本を自ら読み聞かせするというのは、不思議な感覚でした(笑)。子どもたちにとって、親しみやすい場面がたくさんあるストーリーなので、「自分事」として、ストーリーに感情移入しやすいことを実感できたことは、うれしかったです。
ストーリーのアイデアの発端になった子どもにも読み聞かせをしましたが、自分のことだと気が付いているかはわかりませんが、すごく真剣に聞いてくれて、その子なりに何かを感じてもらえたらうれしいですね。
―最後に、「絵本」は子どもにとってどんな存在?
自分だけではなく、自分以外の感情や思い、さらには生活などを知ることや興味を持つきっかけになるのではないでしょうか。出てくる登場人物の喜怒哀楽などを感じたり、共感したりしながら、さまざまな感情を知ることは大切だと思います。
例えば、こういうことをしたらお友だちが嫌な思いをするかなど、日常的に活かせるシーンがあると思います。
「おてがみだいすき」の読み聞かせを実施
クリスマスプレゼントとして全園児に贈呈された「おてがみだいすき」。その前には、新宿区にある「富久ソラのこども園」で読み聞かせ会が実施されました。
絵本の中の女の子は、ママやパパと離れるのがさみしいと感じていた日々に、手紙という家族の絆を感じるツールを知り、自分の言葉で思いを届けます。そんな温かいストーリー展開を真剣な表情で聞き入る子どもたち。
読み聞かせ後には、「泣きそうだった」「いい家族だなと思った」など、しっかりストーリーを把握していると同時に、感情が揺さぶられた様子の子どもたちも。
さらに、「おかあさんと離れるのが嫌で保育園に行きたいと思っていたのに、気持ちを切り替えて行けたことがすごいなと思った」など、絵本の主人公の思いをしっかり汲み取って、分析する大人顔負けの感想を持った子どもいました。
出版社「文芸社」編集担当からひと言
(文芸社 出版企画部 課長 越前利文さん)
―読み聞かせに参加して
「読み聞かせに参加させていただきましたが、絵本を読み終わったあと、大人があっと驚くような感想や、涙目になっている子どももいてびっくりしました。まだ読み書きもままならない幼少期にも関わらず、真剣に絵本に集中していたと同時に、自分の中でしっかり消化できていましたよね。絵本の登場人物を自分に置き換えることができるからこその子どもたちの認知力に脱帽です」。
―絵本とは……
「本は、自分なりに咀嚼して解釈することを繰り返し、その結果、感受性や想像力、発想力が豊かになるものだと思っています」。
現役保育士ならではの思いの詰まった絵本「おてがみだいすき」は、子どもたちの心にグッとささる作品だったようです。さまざまな絵本は無限の発想を引き出してくれる魔法のツールなのかもしれませんね。
タイトル :おてがみだいすき
作者 :夕暮サトシ
出版社 :文芸社
発売日 :2021年12月上旬より以下書店で発売
販売店舗 :三省堂書店・リブロ・文教堂・紀伊国屋書店
AMAZON・Kindle等 絵本ジャンル棚・文芸社コーナーに陳列
〈あらすじ〉
パパもママも いそがしくて、あやちゃんとのじかんが なかなか つくれません。
あるひ あやちゃんは ほいくえんのことを おてがみにかきました。
ママもおへんじを おてがみにかきました。
そのうち かぞくみんなで おてがみを かくようになって‥‥。