コロナ禍にできなかった地域交流
東京児童協会運営の「葛西大きなおうち保育園」は、2023年7月から、地域・世代間交流の一環として、地域のデイサービスセンターとの交流会をスタートしました。
毎月1回、年長クラスの児童たちが30分ほどデイサービスセンターを訪問し、手遊びやクイズ、お歌や劇の発表を行い、デイサービス利用者さんたちと楽しい時間を過ごしています。
「コロナも落ち着き、いろんなことができるようになってきたので、子どもたちにもっと多くの経験をさせてあげたいなと思い、6月にデイサービスセンターの所長さんにお話しに行ったところ快諾していただけました」と語る河野園長。
この日も、1ヵ月ぶりの訪問に子どもたちがワクワクしていました。
出発前は、ドキドキ・ワクワク
季節毎に練習するお歌やお遊戯を披露します。出発前は、おじいちゃん、おばあちゃんたちに会える楽しみな気持ちと、お歌の発表をする緊張感でドキドキしている様子。
この交流会を企画した河野園長は、「コロナ禍の影響で、子どもたちは人前で何かを披露するという経験が全くありませんでした。発表会があっても、保護者1名だけしか見られないという状況だったので、人前に出て何かをやるということに対しての自信をつけてあげたいなと思いました。やはり、そういう自信は経験の積み重ねからできていくと感じています。デイサービスセンターへの訪問を機に、子どもたちが人前でお話や発表ができるような成長につながると良いなと考えました」と語ります。
保育園からは徒歩7分ほど。センターに入る前には、みんなでマスクを装着し、交流会の前には手洗いも済ませます。
1ヵ月ぶりの訪問。子どもたちもまだ少し緊張気味ですが、みんな大きな声で自己紹介ができました!
子どもたちの自己紹介を、利用者さんたちはしっかり聞いてくださっています。
「1回目の訪問時は、緊張して泣きだしちゃった子もいたのですが、今は笑顔で名前を言えるようになってきています。訪問を重ねるたびに、子どもたちの成長にもつながっているのかなと思います」
年長クラスの担任、佐々木なつみ先生も、毎月の訪問を重ねる中での子どもたちの成長を感じているそうです。
今回は、秋の歌でもある「もみじ」や「とんぼのめがね」の2曲を、みなさんと一緒に歌いました。テーブル毎に、2,3名づつに分かれて、歌詞を見ながら一緒に歌います。
子どもたちの声に負けないくらい大きな声で歌ってくれるおじいちゃんに、子どもたちから笑顔がこぼれます。
お歌を歌ったり、秋にちなんだクイズをした後は、「どんぐりころころ」のお遊戯を披露。みんなで前に出て発表をする経験をあまりしてこなかった子どもたちにとっては、この時間も良い経験です。
「最初は、みんな声も小さく表情も硬かったんです。だけど今は、そこに行けばおじいちゃん、おばあちゃんが喜んでくれるっていうのがわかっているので、「ここは、来て良いところなんだ」と子どもたちも感じていて喜んでいます。恥ずかしがり屋で、人前で喋ることに慣れていなかった子も、回を重ねるごとに緊張がほぐれていっています」
1回目の訪問では、先生から「どうだった?」と聞かれてドキドキした~」と話していた子どもたち。それが、回を重ねるごとに、「楽しかった!」と言って、おじいちゃん、おばあちゃんたちと交わした会話を教えてくれるようになったそうです。
また、デイサービスセンターのスタッフのみなさんが、子どもたちが楽しめる工夫をし、夏には夏祭りっぽい装飾をして、ヨーヨーを用意してくださいました。子どもたちはそれを持ち帰り大喜び。
「利用者さんにとっても、この交流会が刺激になっているようです。なかなか孫にも会えなかったり、すでに成長していたりするので、すごく喜んでくれて拍手で迎えてくれるんです」
河野園長は、この交流会を通じて子どもたちの成長を感じています。
子どもたちと交流した日は、みなさんの笑顔が違う
形野 雄太朗 さん
「このデイサービスのスローガンは『お客さまが幸せに長生きができるデイサービスにしましょう』です。このデイサービスに来ている時間だけでも幸せでいてほしいし、長生きをすることがつらいことであってほしくないというのが私たちの願いです。お客さまの中には子どもたちの世代との交流の機会がないという方が多いです。
お孫さん、曾孫さんの世代の子どもたちと交流をすると、みなさんの笑顔がいつもと全然違います。お客さまの笑顔を見ていると、この交流会は本当に意味があると思います。中には、子どもたちと交流をしたとういことを次の日や午後には覚えていられない方もいらっしゃいます。それでも、感情はすごく残ります。
「楽しかった」という感情は残ったまま帰っていただけます。「子どもたち、また来てくれるんだ!」と喜んでいただける方もいます。
その瞬間、瞬間で楽しんで頂きたいという気持ちでデイサービスをやっているので、保育園の子ども達との月に1回の交流は、本当にありがたいことだと思っています」