東京児童協会が運営する都内のこども園で、さまざまなアート活動を行う専任講師として活躍中のなお先生。多くの子どもたちにユニークなアート活動を展開しています。今回は、「台東区立たいとうこども園」で実施された描き初めアート教室を取材しました。
ユニークなアート活動を手掛ける“なお先生”
なお先生は、東京児童協会が手掛ける複数の園で、アート活動の専任講師として活躍。粘土のワークショップを卒業制作に美大を卒業後、舞台美術や映像関係の仕事に携わるなか、同じように東京児童協会でアート教室の講師として活躍する杉先生からの声掛けが始まり。
かつては、自身のスタイルにぴったりなプレイリーダーを目指したこともあり、願ってもない誘い。二つ返事で快諾。
すべてが自由な環境であるプレイパークのような状況ではないものの、限られた環境の中でも、子どもたちに寄り添った最大限自由なアートを展開したいと、日々ユニークなアート活動を行っています。
そのアート活動は多岐にわたり、ただ絵を描くのではなく、写真を見て好きなところの線だけをなぞってみたり、お神輿を作ったり、室内で泥遊びをしたり、過去の作品にアレンジを加えてみたり。
アート活動のテーマは、自身で考えた企画に加え、ときには「こんなことをしたい!」と、子どもたちや保育士からの相談がきっかけになることも。
アート活動では、「アート」を教えているというより、「遊びを提供」している感覚だとなお先生はいいます。子どもたちにとってはどんなものでも遊びに!
多彩な素材の中から自由に描くアートな時間
「台東区立たいとうこども園」で実施されたアート活動の今回のテーマは「描き初め」。「今日はたくさんの“線”を用意しました!」となお先生。毎回テーマこそあるものの、どんな作品を創るのかは、子どもたち次第。
まずなお先生が用意したのは、今年の干支にちなんだ「卯」の文字。とはいえ、単純に文字を描くだけではなく、卯の絵や、漢字を少し崩した文字、絵から漢字になる変化の過程が描かれたものなど、さまざまな“お手本”を参考に、描き初めをしていきます。
「描いて」とは言わず、「線をなぞってみて」と、子どもたちにより伝わりやすく、チャレンジしやすい言葉のチョイスは、なお先生ならでは。
今回に限らず、アート活動を始めるときは、事前に体を動かしたり、声を出したりすることも多く、子どもたちをリラックスさせることも忘れません。
お手本を参考にするもよし、自分の考えたうさぎの絵を描くもよし。なお先生のアート活動は、フリースタイルが特徴。
お手本を見せながら「漢字って線の形から進化してるんだよ」、「寝ながら書くと寝ている字になるよ」など、子どもたちに伝えたいことは、しっかりアナウンス。
1 枚のみならず、何枚も夢中で描く子どもたち。次々とできる作品を前に、「すごいね!」と、なお先生は満面の笑みで応えます。
たまたま目に入った「新年お楽しみ会」の文字を真似て描き出した子どもいて、それぞれがのびのびと自由に創作活動を行っています。それを見たなお先生は、何度も「いい線だね!」と大絶賛。「こっちもお願い!」と、子どもの「やってみたい」をどんどん後押し。
最後は、全員の作品をみんなで鑑賞します。自分だけではなく、お友だちが描いた作品を見る時間をあえて設けることで、自分以外の経験を見る事ができ、さまざまな刺激にもつながります。
何かを描くときは、「よく見ること」も大切で、「鑑賞、観賞」に焦点をあてたアート活動もあるそう。そのかいあって、作品を見ただけで、だれが描いた作品かを理解する子どももいるほど。
遊びの天才でもある子どもたちだからこそ、これまでのアート活動でなお先生が驚かされたことも多々。ある日、フットペイントを試みたところ、世界的に有名な画家のようなアーティスティックな作品ができ、感動したことも。
アート創作は、子どもたちの視野を広げたり、チャレンジしたりするきっかけだと話すなお先生。子どもの興味・関心をグッと広げてくれる、子どもの成長にも直結する活動ですね!