企業主導型保育の助成金仕組みや保育業界の現状とは?

株式会社ONE ROOF(東京都江戸川区)で代表を務める菊地 元樹(きくち もとき)。保育・学童・放課後支援事業など、保育園業界で幅広く展開。保育業界では珍しいホワイト企業認定を取得し、よりよい環境を目指しながら日々新規事業にも精力的に取り組んでいる。現在の保育業界について、業界の裏側をざっくばらんに語ってもらった。

株式会社ONE ROOF代表・菊地 元樹さん

企業主導型の助成金について


基準とされる公定価格があり、地域や受け入れ年齢、環境などによって助成金は変動します。まず、大前提として、企業主導型保育園は内閣府、保育園は厚生労働省、幼稚園は文部科学省がそれぞれ管轄になっています。

近年問題になっている待機児童対策として企業主導型保育は、内閣府主導で誕生したわけですが、この財源は「特別復興支援税」が基となり、事実上、これが「子育て支援金」として活用され、企業主導型保育の運営費として認可保育と同等くらいの補助を受けることが可能です。

年齢によって助成金は変動し、年齢が低いほど助成金が高くなります。もちろん助成金の支給に伴ってさまざまな条件をクリアする必要があります。例えば保育士の配置ですが、0歳児なら3人、1歳児なら5人、2歳児なら5人に対してそれぞれ保育士1人が必要になります(地域によって多少変動有)。つまり、保育士が多く必要な年齢ほど助成金は高く設定されているんですよね。

利益率を考えると低年齢層を多く預かるのにメリットを感じるかもしれませんが、とはいえ当然人件費も比例して高くなります。そうはいっても、やはり収益面から、0~3歳児だけを預かる小規模保育所を中心に運営している施設もあります。


助成金取得の条件に敷地面積の確保というのもあります。こちらも年齢別に設定されていて、0歳児なら5平米、3~5歳児なら1.98平米の面積が必要になり、助成金を受けるための条件のひとつ。このように敷地面積によっても定員数が決まります。

助成金を受けるための条件クリアは必須ですが、保育園運営において、収益を優先させるなら0~1歳児をいかに受けれられるかの環境づくりが重要なポイントになります。

企業主導型保育の参入について

実は、2020年に企業主導型保育への参入が一段と厳しくなった現状があります。その背景には、残念なことに、給付金を不正に受給する施設が増えたこと。

そんな状況でも保育士の経験があれば、見切り発車はできるでしょう。ですが、いざスタートして現場の環境を整えることはできても、実際の運営となると話は別で、当然一筋縄ではいかない部分がどうしてもでてきます。実際、運営が出来ずに手放している施設も相当数あり、なんの理念もなく、やみくもにスターするのはリスクが高いといえるでしょう。

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保育現場の実情


実は、0歳児を預ける人が減っている現状があります。場合によっては0歳児のクラスの定員割れも見受けられます。

保育士の数や敷地面積の条件が緩和されるのもあり、本来は年齢が高くなるに連れて定員数が増える「ピラミッド型」でしたが、近年はどの年齢も同じ定員数に設定されている「煙突型」が主流になりつつあります。

こうした背景から、定員数の変化はしかたない部分もあるのですが、自治体は待機児童が多い年齢の定員数を増やしてほしいといった、保育現場と役所の意向に乖離があるというもどかしい現状も。

待機児童について

待機児童は、1、2歳児が多い傾向にあります。ちょうど育児休暇があけるタイミングもあって、1歳から預ける保護者の方が多いという背景があります。とはいえ、煙突型の定員スタイルだと、すでに1歳児の枠が埋まっているという、受け入れ体制の現状があります。

加えて近年は、低年齢のみ受け入れ可能な小規模保育園が多くできたことで、3~4歳の待機児童も増加傾向にあります。

今後の展望


これからの保育業界は、厳しい現実に直面することが予想されます。ですが、現状を維持するだけでは、何も変わりません。園のカリキュラムを充実させるのは当然のことながら、未来を担う子どものために、さらに新しいことに目を向ける必要があります。

また、保育士に対しての社会的地位も見直しが必要だと感じています。保育士の待遇面が改善されれば、保育士不足も解消されますよね。保育業界には課題が山積みですが、どんどん新しいことにチャレンジしていきたいですね。

社会福祉法人東京児童協会

ONE ROOF ALLIANCE ワンルーフアライアンス

 

ONE ROOF ALLIANCE ワンルーフアライアンス

ONE ROOF ALLIANCE ワンルーフアライアンス
現在、都内22の認可保育園と認定こども園を運営する「社会福祉法人東京児童協会」と、企業主導型保育園や学童保育の運営、海外への保育事業を展開する「株式会社ONE ROOF」が主体となり、新しい子育て社会を実現していくネットワークです。