企業主導型保育の優遇制度のひとつに「割増償却」があることをご存知でしょうか。保育事業を立ち上げる際にはまとまった資金が必要であり、特に初年度は額も大きくなるため、できるだけ出ていくお金を減らしたいものです。この割増償却を申請すれば固定資産税の早期の費用化による利益の縮小により、初期費用を抑えることが可能になります。
保育施設は建物から屋内外の遊具までさまざまな固定資産で構成されていますから、上手に利用して少しでも初期投資の負担を軽減しましょう!
ということで今回は割増償却について解説します。
目次
企業主導型保育における割増償却の概要
企業主導型保育において事業者が受けられる優遇のひとつが「割増償却」です。この制度の条件は2018年4月1日から2020年3月31日までの間に取得した保育施設用の資産であり、所有者が企業主導型保育として認定されていることです。新設および増設どちらであっても適用されますが、保育事業を目的とする利用がされている期間に限り適用されます。
優遇の内容は上記に挙げた固定資産の償却費を12%増やすもので、建築や構築物についてはさらに3%を加えた15%で償却することが可能です。期間は事業開始日から3年間となっており、申請時期に応じて優遇を受けられる期間も変わります。
では割増償却ができると企業にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。
保育所の固定資産
まず割増償却の対象になる「固定資産」について解説します。固定資産というのは、1年以上にわたって使用もしくは利用する目的の資産を指します。所持していると固定資産税が課せられます。
土地や建物のほかに、保育施設で考えられる主な固定資産の例は以下の通りです。
遊具類:滑り台、ブランコ、ジャングルジムなど
家具類:テーブル、いす、ロッカーなど
防犯設備:カメラ、レコーダーなど
園児のための遊具や教室で利用する家具類などといった、一般の企業とは異なる固定資産が保育施設には設置されるということを知っておきましょう。
減価償却と割増償却のメリット
こうした保育施設が所有する固定資産は、企業会計においては償却処理を進めることで費用化されます。この減価償却と償却スピードを速める割増償却のメリットについてご紹介します。
減価償却とは
一般の家庭では大型家電や家具などを購入した場合には出費と捉えますが、企業会計においては先述した固定資産は当初は費用ではなく会社の資産です。
しかしこうした資産も月日を重ねれば老朽化して価値が下がります。そのため企業会計では年月を経て価値が薄れていくと考えられる資産については、耐用年数に応じて分割して経費にすることを認めています。この耐用年数は品目ごとに定められており、償却の割合は耐用年数によります。
償却割合に関しては定率法と定額法という償却スピードの異なる2つの方法が法律で定められており、この割合を超えて償却することはできません。
割増償却のメリット
本来税法に定められた割合(普通償却限度額)を超えて償却できる優遇制度が割増償却です。普通償却の限度額に割増償却の比率を掛けた額が、特別償却額となります。償却された費用は企業の全体利益から差し引かれ、結果的に課税される利益を減らすという意味において税額控除の効果があります。
さらに早期の償却は保守費用などが嵩む後年における費用を減らすことができるため、収益のバランスを損なうリスクを回避できるともいえます。
注意点
ただし、リース契約の物品は注意が必要です。そもそもリース物品は固定資産ではなく、毎月のリース料は元来費用となります。そのため償却の優遇処置である割増償却は適用されません。
割増償却の手順
企業主導型保育の事業者が割増償却の優遇を受けるためには、確認申請と適用申請の2ステップが必要です。その方法についてご紹介します。
児童育成協会への確認申請
企業主導型保育の認定を行う児童育成協会が、割引償却の適用を認めなければなりません。
まずは、こちらのページの「税制適用確認書兼確認申請書」を作成します。他に助成決定通知書(整備費および運営費)、共同出資の場合は共同設置契約書も準備します。
そしてこれらの書面を児童育成協会へメールで送付しますが、申請書は押印済みのPDFでなければなりません。毎月10日までに提出された申請書は月末までに確認・返答されます。当然、書類に不備があると認定されないため、スムーズな許可を受けるためにもこちらの資料の送付方法をよく確認してください。
税務署への適用申請
法人税もしくは所得税の申告時に、児童育成協会が押印済みの「税制適用確認書兼確認申請書」を管轄の税務署に提出します。
まとめ
企業主導型保育の事業者が受けられる優遇措置のひとつ「割増償却」についてご紹介しました。保育施設の設営当初は建物の建設費用や諸経費などで出費が嵩みますので、払う税額は出来る限り抑えておきたいものです。割増償却は本来設定されている減価償却の割合を当初3年間にわたり高められるため、償却の額を大きくして費用を増やすことで利益を減らし、結果的に税額を減らすことが可能になります。
ただし、割増償却は申請が必要で、事業を始めて向こう3年までが適用期間です。この記事でご紹介した申請方法を参考にして最大限に優遇を受けられるようにしてくださいね。とはいえ減価償却など企業会計には複雑な部分もあるので、手間をかけずに優遇を受けたい場合にはノウハウのある業者に任せると良いでしょう。