新しい保育施設の形として注目されている、企業主導型保育事業。企業が従業員のために保育施設を設立、運営する場合に、一定の基準を満たすことで助成を受けることができる制度です。従業員のための保育施設を設置したいという企業にとっては嬉しい制度ですね。
しかし、設置や運営にかかる費用を全て助成金で賄えるわけではありません。例えば、施設を設置するために必要な整備費は、かかった額の4分の3を支給されますが、4分の1は自己負担になります。また、運営費の助成もすぐに受けられるわけではないため、保育士を雇うための費用の捻出も必要です。
さまざまな初期費用が必要な中で、企業主導型保育施設を設立したいけれど費用が足りない、という状況に陥ることもあります。そんな時に大きな力となってくれるのが融資制度です。企業主導型保育施設の設立を目指すために、知っておきたい融資制度をご紹介します。
目次
企業主導型保育に適用される融資制度とは
企業主導型保育施設を設立したいけれど設立資金が足りない。そんな場合に大きな味方となってくれるのが、日本政策金融公庫の融資制度です。内閣府が発表している企業主導型保育事業パンフレットにも、日本政策金融公庫の融資制度についての記載があります。
日本政策金融公庫とは、一般の金融機関が行う金融を補完することを目的としている機関です。中小企業者の資金調達支援も目的としており、企業主導型保育施設設立のための融資も多く行っています。
実際に業種別融資実績によると、児童福祉事業への融資は平成27年度上半期は354件であったのに対し、平成30年度の上半期は738件と倍増しています。この背景には企業主導型保育事業に取り組む事業者が増え、融資件数が増えたことが関係していると思われます。また日本政策金融公庫だけでの融資ではなく、民間の金融機関と協調して融資を行う「協調融資」が増加していることも特徴の一つです。
業種別協調融資実績によると、児童福祉事業の協調融資は平成27年度上半期の45件に対し、平成30年度上半期は192件と4倍以上に増加しています。企業主導型保育施設が含まれる保育所の件数に注目すると、平成27年度上半期は24件であったのに対し、平成30年度上半期は89件。こちらも4倍近く増加しています。日本政策金融公庫が企業主導型保育事業に対して多くの融資をしているだけではなく、民間の金融機関も協調して融資を行っているということです。
全ての必要資金を日本政策金融公庫の融資制度で借り入れるのではなく、民間の金融機関との協調融資を目指すという方法もあります。融資額などの詳しい情報は、お近くの日本政策金融公庫の各支店に問い合わせることをおすすめします。
一般の銀行でも融資可能なの?
日本政策金融公庫が民間の金融機関との協調融資で、企業主導型保育事業への融資を行っていることからも分かるように、一般の銀行からも融資を受けることは可能です。中でも、企業主導型保育事業を始める事業者を対象とした融資制度を用意している金融機関もあります。詳しく見ていきましょう。
中国銀行の保育事業応援融資制度・愛育(あいく)
岡山県に本店のある中国銀行。広島県や香川県、東京都や大阪府にも支店があります。中国銀行が保育事業を行う事業者をサポートするための融資制度として提案しているのが、保育事業応援融資制度・愛育です。企業主導型保育施設も含めた保育事業施設の建設資金や土地購入資金、開設に必要な資金を融資してくれます。利用対象は保育事業を行う法人または個人事業主。融資資金は保育施設の開業経営に必要な範囲の資金です。
融資制度の1つとして、「つなぎ融資」もあります。つなぎ融資とは、企業主導型保育事業の助成金が支給されるまでのつなぎとして受けることのできる融資で、融資期間は1年6ヶ月以内。保育施設の設置工事から助成金の支給までは、かなりの期間がかかりますので、自己資金が少ない状態で企業主導型保育施設を設立したいと考えた時には嬉しい制度ですね。
独立行政法人福祉医療機構
独立行政法人福祉医療機構とは、福祉の増進と医療の向上を目的とする独立行政法人です。福祉の増進を目指して、社会福祉施設の貸付事業も行っています。企業主導型保育事業への融資も平成30年度より開始。利用対象は、企業主導型保育施設を設置する法人です。
こちらの融資制度の最大のメリットは、優遇適用取扱期間中は2年間を据置期間として、無利子で融資を受けられるということ。通常であれば0.50%である利子がない状態で融資を受けられます。優遇適用取扱期間は令和3年3月31日までとなりますので、その期間内で企業主導型保育施設開設を考えている場合は、ぜひ利用したい制度ですね。
助成金のつなぎ資金としての融資の役割
企業主導型保育施設開設にあたり、必要な自己負担資金を用意するために融資制度を利用するケースは多くあります。しかし自己負担資金が用意できたとしても、融資を利用した方が良い場合もあるのです。それが、助成金のつなぎ資金としての利用です。
企業主導型保育事業の整備費助成は、基本的には工事完了後に完了報告を行ったのち助成金が支払われます。しかし設置者の負担軽減のための前払い制度として、概算払いの利用も可能です。こちらの制度では、完成前に支払いを行っている場合に限り手続きを行うことができます。ただ、必要書類として前払いなどの支払いが確認できる金融機関の振込通知書が必要ですので、概算交付申請を行う場合でも、支払いを行うための資金調達が必要なのです。
また運営費助成においては、毎月の月次報告を行い、該当月の翌々月の支払いとなります。こちらも概算交付申請を行うことで前払いが可能ですが、見込額の申請ですので、実際に必要な額の全てを受け取れるとは限りません。整備費、運営費の両方において、実際の助成額を受け取るまでのつなぎ資金としても、融資制度の利用は重要であるといえるでしょう。
まとめ
企業主導型保育施設の設立を考えた時に知っておきたい融資制度についてご紹介しました。助成金が支給されるとはいっても、必要経費の全てを設立段階で用意することは至難の業。助成金支給までのつなぎ資金としても、融資制度を上手に利用すると良いでしょう。