企業主導型保育事業は、企業の子育て世代の従業員が働き方に合わせて安心をして子どもを預けるための企業が主体となる保育事業です。事業としては認可外保育施設に該当しますが、認可施設並みの助成が受けられます。
ただし、事業として認められて助成を受けるためには申請が必要で、その申請はかなり複雑で時間のかかるものとなっています。そこで今回は企業主導型保育事業の申請の流れや注意点について解説します。
企業主導型保育事業と申請
企業主導型保育事業は各種助成を受けられる魅力的な制度ですが、申請のハードルは上がっています。はじめるにあたって、まずは事業制度の趣旨と申請の種類について確認をしておきましょう。
企業主導型保育は、事業者自らもしくは委託した保育事業者が保育施設を運営することにより、企業ごとのニーズに合った子育てを支援する保育を提供するための制度です。
業種ごとの多様な働き方に適合した保育を提供することで子育て世代のキャリアの継続を応援します。また待機児童が多いエリアの従業員と地域の保育へ企業が貢献することも視野に入れた制度です。
このように社会情勢も鑑みた事業制度であることから、認可外の保育事業でありながら事業として申請が通れば認可並みの助成金を受けることができます。具体的にどのような助成が受けられるかというと、建物などの保育設備のための整備費と保育事業を実施するための運営費があります。
それぞれについて申請を行い、審査を受けて助成の可否が決まります。助成の割合などについてはこちらをご確認ください。
参考サイト:制度紹介(公益財団法人 児童育成協会)
それでは具体的に、保育事業をはじめるための設備工事などハード面を助成する整備費の申請について次の項目で流れを解説します。
整備費の申請
保育事業をはじめるにあたって建物や設備を整えることが第一歩となりますが、一度に大きな費用がかかります。企業主導型保育事業において、こうした費用の助成を受けるためには整備費を申請する必要があります。
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整備費の申請
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内示審査
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内示決定
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助成審査(追加や修正で差し戻しあり)
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助成決定
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工事完了報告
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助成確定
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助成金の請求及び交付
申請のポイントとしてはじめに念頭に置いておかなければならないことは、申請準備に時間や手間がかかることです。申請期間は毎回異なりますが、約1か月程度で全ての資料を準備することは難しいといえます。(令和2年度の場合は1か月前頃より児童育成協会による公示がありました。)
例えば、申請準備の見積もりについては2社のうち1社が公共工事の入札資格を有することが要件となっています。
また令和2年度より、内示決定以前に行った工事については助成の対象外となりました。これは申請をすれば必ずしも助成が通るわけではないということであり、内示から開業までの期間に工事を完了させる計画性も求められているといえるでしょう。
なお、令和2年度からの大きな変更点として新築と増改築工事のみが整備費の対象となり、改築工事は次の項目で解説をする運営費の改修支援加算となります。企業主導型保育事業の制度は年度ごとに変更や修正が加えられてきています。申請時にはそうした確認も重要といえるでしょう。
企業主導型保育事業の整備費の応募期間は毎回異なります。申請準備には時間がかかりますし、間違いのない書面を作製するためには、事業への参画を決めたら次の応募期間に向けて着手をすることが重要といえます。次は施設が整った後に必要となる、運営費に関する費用の申請について解説します。
運営費の申請
保育施設を運営する上では人件費や管理費、園児の募集など費用がかかりますが、事業を軌道に乗せるまでには相応の時間もかかることでしょう。そこでこうした費用を助成するものが運営費です。申請の手続きを見てみましょう。
運営費に関しては、整備費が申請されると児童育成協会から運営費申請の時期が案内されます。
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運営費の申請
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審査(修正など差し戻し対応アリ)
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運営費助成決定
運営費が整備費と異なる点としては、実績を毎月報告して助成金交付の手続きを行う必要があります。つまり、助成決定のみで助成金が交付をされることはありません。(ただし資金繰りを援助する目的で、手続により前払いが可能になることもあります。)
そして申請は年度ごととなっています。月次報告だけではなく、年度末には、1年を総括して完了報告を提出することが必要です。これらの書面には提出の期限が設けられています。
このように運営費の助成を受け続けるためには、報告を重ねていく必要があります。卒入園などの忙しい時期に報告の準備や提出期日が重なる場合もありますので、抜けや漏れを防ぐためには専門家のサポートなどを受けるとよいでしょう。
まとめ
手厚い助成を受けられる企業主導型保育事業ですが、申請手続きは複雑な上に応募期間も定まっていません。
これから事業をはじめようと決めているのであれば、次の応募期間(令和2年度は終了)に向けて申請準備にいち早く着手しておくことが肝要です。
書類に不備があると差し戻しなど審査に影響が出ることもありますので、専門家のサポートを受けてぬかりなく前もって準備を進めていきましょう。