企業主導型保育とはどのような保育事業を指すのでしょうか。
政府は女性のさらなる社会への参画をすすめる「一億総活躍社会」を推進する一方で、子ども、特に0歳~2歳児の保育の受け皿が地域によって不足している現状を考慮して、この企業主導型保育を新設しました。認可外の保育所として多様なサービスが許容される事業でありながら、助成も受けられるという特徴の企業主導型保育。その保育事業について、保育種類の分類や、事業の概要や役割、特徴について解説します。
目次
企業主導型保育とは
まず企業主導型保育とは諸保育のなかでどのような位置づけにあるのでしょうか。従来型の保育所との違いを含め詳しく見てみましょう。
保育園の種類について
現行の保育は認可という観点から「認可」、「認可外」の2つの種類に区分することができます。認可保育は認可保育所や地域型保育事業、認定こども園などを指します。認可保育の場合には国が定めた基準を満たし、都道府県知事に認可されなければなりません。認可の基準が厳しく定められていますが、そのぶん国や地方自治体からの補助金を受けることが可能です。
一方の認可外保育は比較すると要件が緩く、さらに2つに区分されます。ひとつは託児所やベビーシッター等、助成などはなく保育料が事業者の裁量で設定される認可外保育施設です。
もうひとつは内閣府が創設した保育事業の企業主導型保育です。事業主が主体となる保育を指す認可外の保育事業を指します。認可外ではありますが、設置や運営には認可保育所と同等の基準が設けられています。ただし公益財団法人児童育成協会が保育事業者として認めれば助成金を受けられる認可外保育です。
企業主導型保育の概要
政府が主導して新設された保育事業です。なぜ、企業主導型保育が必要になったのでしょうか。その背景と役割について解説します。
企業主導型保育園が設立された背景
企業主導型保育は平成28年に、政府の提唱する「一億総活躍社会」の実現に向けて、待機児童問題の解消を目的とした保育整備の一環として創設されたものです。働きたくても乳幼児を抱えて仕事に復帰することが難しい子育て世代を支援する制度ともいえます。
企業主導型保育の役割
従業員の子育てと仕事の両立を応援し、事業主が優秀な人材を確保する役割を果たします。また、さまざまな業種や働き方において女性や子育て世代が活躍するための保育所を、企業が主導することにより、実務の実態に合わせた保育を可能にします。
企業主導型保育の特徴
企業主導型保育は企業が行う認可外の保育事業です。内閣府がその特徴について提唱しているので、その中身について詳しく解説します。
内閣府が打ち出した特徴
政策として内閣府が立ち上げた企業主導型保育。内閣府がうたう特徴を紹介します。
- 事業に合わせた柔軟な保育サービス
- 助成金が受けられる
- 複数の事業者による共同設置や相互契約が可能
- 地域住民の子どもも受け入れ可能
次にそれぞれについて詳しく解説します。
多様な保育サービスの提供を実現
時間に関する規定がないため、延長や夜間保育、休日や短時間での利用を設定することが可能です。
例えばシフト制での勤務が一般的なサービス業などは、一般の保育所の選択肢しかない場合にはキャリアをあきらめなければならないこともあるでしょう。認可外の他の施設は料率も事業者に任されているため割高です。企業主導型保育であれば、柔軟に預け入れを設定することが可能なので、子育て世代の離職も防げるといえます。
認可外だが補助が受けられる
本保育制度の事業主と決定されれば、認可施設並みの助成金を受けることも可能です。中小企業では最大97%、大企業では最大95%の運営費や整備費を助成してもらえます。
公益財団法人児童育成協会による審査や監査の対象であり、都道府県への届け出も必要ではありますが事業者の実態に見合った保育施設をつくることが可能です。
他企業との共同設置も可能
保育事業主は単独でも共同でも設置が可能です。また、事業者間の契約という形で他の事業者との共同利用も考えられます。また認可保育並みの厳しい基準が設定されることで、50%以下の割合で従業員の子ども以外にも地域住民の子どもを受け入れることが認められます。こうした共同設置や運営、助成金、地域の子どもの受け入れなどを図るためにぜひ活用したいポイントです。また従業員以外の子どもの受け皿としても機能するということは、社会貢献度の高い事業者としての認知も得られることでしょう。
まとめ
企業主導型保育は事業主が主体となって運営される認可外保育の一種です。認可外保育は通常、事業者の助成などはありませんが、企業主導型保育では要件を満たし、保育事業者として認められれば、認可保育と同等の助成を受けることも可能です。事業の内容としては、より個々の事業主の実態に合わせた保育の実施を許容しており、従業員の多様な働き方に対応できる、子育て世代にやさしい制度です。また事業者にとっても、地域の子どもを含めた保育に関わる社会貢献度の高い会社としてのブランディングも可能になります。