企業主導型保育は法人が行う事業です。そのため固定資産税が課せられます。保育施設を運営するためにはさまざまな固定資産が発生し、支払うべき固定資産税も相応になるものです。そのため経営が安定するまで発生する費用が心配だということもあるでしょう。そこで試算に入れて検討していただきたいのが企業主導型保育で受けられる固定資産税の優遇です。
今回は企業主導型保育における固定資産税の優遇について、固定資産税の定義や計算方法、保育事業者が受けられる優遇内容のシミュレーションを含めてご紹介します。
固定資産税とは
固定資産を所有するものに課せられる地方税を固定資産税といいます。固定資産には土地や家具などの有形固定資産とソフトウェアなどの無形固定資産がありますが、固定資産税が課されるのは有形固定資産です。
固定資産の分類
有形固定資産はさらに大きくふたつに分けられます。この分類において土地や建物は固定資産とよばれます。他方、年月を経て価値が減少していくような、土地や建物以外の家具や電化製品等は償却資産とよばれます。
固定資産は毎年1月1日時点で固定資産台帳に登記されているものが課税されます。保育施設であれば、施設の建物と立地する土地などに課税されるものと考えられます。
償却資産は毎年1月1日時点で所有する償却資産について取得年月や取得価格、耐用年数を申告して課税を受けます。保育施設であれば園児用の机といすや下駄箱、遊具に加えて、業務上で利用するパソコンや印刷機などもこれに該当します。
固定資産税の計算
それでは固定資産税はどのように計算をするものなのでしょうか。
まずは課税の対象となる金額(課税標準額)を決めます。これは固定資産によって評価する基準が定められており、基本的にはその評価額が課税標準額となります。標準税率は1.4%であり、以下の計算式となります。
課税標準額×1.4%(標準税率)
次に固定資産の課税標準の定め方です。現時点では、土地は公示価格の7割、家屋は評価額が課税標準額とされています。一方の償却資産については、耐用年数と取得価格に基づく評価額が課税標準とされます。
※いずれも2019年10月時点、評価基準については見直しの可能性あり。
企業主導型保育の固定資産税の扱い
ここまでに紹介したのは一般的な固定資産税の算出方法です。企業主導型保育の場合には時限的に固定資産の優遇措置が設けられています。これは安定的に園児を確保し、経営を軌道に乗せるまでの間、さまざまな所有物について発生する固定資産税を減免するものです。
固定資産税の優遇
さて具体的な優遇の内容ですが、課税標準額を1/2に設定することができます。これは本来であれば持っている固定資産や償却資産の課税標準額の100%に対して1.4%の課税が課されるところを、その50%分についてのみ課税されるというものです。つまり以下のような計算式になります。
課税標準額(評価額×50%)×1.4%(標準税率)
なお、課税標準額の1/2というのは国が定めた標準であり、実際には市区町村が1/3~2/3の範囲内で裁量によって定めることを認めています。実際の課税標準額については保育所を設置する市区町村へ確認するのがよいでしょう。
またこの制度は現在のところ継続されていますが、時点措置といって期限の定めがあります。この点について固定資産税優遇の期限の定めがない事業所内保育とは異なりますのでご注意ください。
詳しくはこちらの記事もご参考ください。⇒No.10-1 企業内保育所の事業者には税優遇アリ!その内容を解説!
固定資産税のシミュレーション
さて、気になるのは固定資産税の優遇措置によって実際にどの程度の減税がされるのかということですね。例えば固定資産(土地)でシミュレーションするとどうなるでしょうか。
【土地の公示価格の7割が5000万の場合】
優遇なし:5000万×0.014=70万円
優遇あり:5000万×0.5(優遇比率)×0.014=35万円
優遇による差額:35万円
土地や建物といった固定資産は特に評価額が高額であるため節税効果は高くなりますが、ご紹介した通り保育施設には他にもたくさんの固定資産や償却資産があります。こうした有形固定資産の課税標準が全て1/3~2/3となり、それが数年に渡ればどれほど節税になるのかは想像に難くありません。
ただし固定資産税をはじめとして税制優遇を受けるためには、企業主導型保育事業者の要件を満たした上での申請が必要になります。確実に税制優遇を受けたいという場合には専門事業者へ相談すると良いでしょう。
まとめ
企業主導型保育の事業者が受けられる固定資産税の優遇についてご紹介しました。時限的な措置であるとはいえ、通常の法人であれば固定資産の評価基準に基づいた額面の100%に課せられる税が、標準で1/2になるというのは大変魅力的であることをご理解いただけたのではないでしょうか。
初期費用の心配があって企業主導型保育に踏み切れない場合には、助成金の活用のみならず固定資産を含めた税制優遇で減免される費用まで試算に盛り込んで検討してみてください。ただし申請の上で優遇が受けられる制度ですから、専門業者へ相談の上で進めることをおすすめいたします。