企業主導型保育事業を始める上で保育士は必要不可欠です。しかし、長期で働きたいという保育士に来てもらうためには、労働条件を整えなければなりません。そこで活用したいのが保育士の処遇を改善する処遇改善加算の助成制度です。
企業主導型保育事業を始めるうえで、保育士を確保することは必要不可欠ですが、そのためには保育士の処遇改善、とりわけ賃金の改善は必要不可欠です。
設立の背景には、低賃金を理由とした保育士の離職率の高さ、そして人材不足による待機児童問題があります。そのため、国では保育士に相応の賃金が支払われるように、一定の助成金を交付することで、「職員が長く、安定した給与で働ける職場環境」の整備を目指すことにしました。
今回は、その「処遇改善制度」について紹介していきます。
今まで慢性的な人手不足が起こっていた保育園現場ですが、その主な原因は賃金の安さにありました。そこで、国(内閣府)は、質の高い保育を安定的に供給するために、職員の人件費の一部を助成、運営支援を目的とした「職員の賃金改善」の助成金制度を作りました。これが「処遇改善加算制度」です。以下の項からは、この助成金の仕組みや目的について詳しく紹介していきます。
目次
保育士確保のための処遇改善加算制度
「処遇改善加算制度」は非常に煩雑なため、慣れない事業者は間違った理解をしてしまうことがあります。そのため貰えるはずだった助成金が貰えなかった、というケースもしばしばあるようです。
それでは、せっかく職員の処遇を改善するための制度も無駄になってしまいます。そうならないように、注意するようにしましょう。
質の高い保育士の確保
上述しましたが、保育士の離職の原因は、低賃金が大きな要因であることが、国の統計資料でも分かっています。
そのため、質の高い保育士に長く働いてもらうためには、労働力に見合った賃金を安定して支払える、運営費支援の制度がなくてはいけません。そのために法人の経営を支援し、保育園の運営と質の高い保育士の確保ができるように、処遇改善の運営支援制度が作られたのです。
労働条件を整えることが必要
保育士の労働条件はかなり過酷です。その主なモノを上げてみましょう。
- 労働時間が長い
- 保護者の都合などで早朝や夜間の出勤もある
- サービス残業が多い
- 持ち帰りの仕事がある
こう見るとかなり過酷な業務と言えます。いくら子どもが好きで始めた仕事とはいえ、薄給で重労働では、なかなかヤル気のある人材を集めることはできません。
保育士賃金の是正
2017年11月に、安倍内閣は2019年から「保育士や幼稚園教諭の処遇改善策」の施工を表明しています。
これは、2019年の10月に予定されている消費税10%の引き上げ分を財源とした、いわゆる「2兆円政策パッケージ」の一環です。幼児教育に従事する方々への、報酬の見直し策が現在検討されています。
保育園の受け入れ児童数の改善
認可保育園での児童受け入れ可能定員が少ないのは、0歳∼1・2歳児の年齢ごとに配置する、保育士の数が足りていないことが原因です。そこで認可外の企業主導型保育所では、職員の半数が保育士であればよい、という配置基準の見直しが行われました。
処遇改善加算とは
処遇改善加算には、2つの加算規定があります。
ひとつは、「処遇改善加算Ⅰ」で、職員への賃金改善やキャリアップの取り組みに応じて使われる人件費としての加算です。
もう一つは、「処遇改善加算Ⅱ」です。これは、技能・経験を積んだ職員に対する追加的な人件費の加算です。
企業主導型保育事業の処遇改善加算は2種類
では、ここからは処遇改善加算のⅠとⅡについて説明していきます。どちらも賃金アップを目的にした助成金ですので、事業運営費等の他の用途には使えないことに注意して下さい。
処遇改善加算Ⅰ
- 内容:職員の返金経験年数に応じた人件費。定量加算
- 対象者:平均勤続変数に応じた2~12%
- 支給方法・使途:非常勤を含む全職員。適切に支給(勤続年数の長い職員も基本給、手当に充当)
- 手続き:加算率の認定
職務、雇用形態、役職を問わず全職員が対象です。ただし、専従加算者は対象外。加算見込み額は、平均利用児童数、定員別単価額により算出する。
処遇改善加算Ⅱ
役職によって処遇が変わります。具体的には以下のようになります。
- 副主任保育士・専門リーダー:月額4万円
- 職務分野別別リーダー・若手リーダー:月額5千円
これにキャリアパスの仕組みを国が構築し、キャリアアップによる処遇改善に要する費用に係る公定価格上の加算を支援します。
処遇改善の対象者
- 月額4万円の処遇改善対象者:副保育等主任等の職位の発令・職務命令・経験年数が概ね7年以上・国が示す研修の4分野以上の研修を修了していること
- 月額5千円の処遇改善対象者;職務分野別リーダー等の発令・職務命令・経験年数が概ね3年以上・担当分野の研修を修了していること
まとめ
今回は、保育士の処遇改善加算について紹介しました。この制度を活用することで、保育士の賃金の改善や雇用の安定が図れ、質の高い保育サービスを提供することができるようになるでしょう。