企業主導型保育の用途変更はどんな時に必要?手続きの方法も解説

企業主導型保育事業の助成を受けるためには、さまざまな手続きが必要です。その中の1つが建物の用途変更手続き。既存の建物を企業主導型保育施設として利用する場合には必要となる可能性のある手続きです。

ただし、既存の建物を利用する全て施設において用途変更が必要なわけではありません。しかし条件に当てはまる場合には、用途変更手続きが必要です。企業主導型保育における用途変更とはどんな手続きなのか。手続きが必要なケースや手続き方法を解説します。

企業主導型保育における用途変更とは

企業主導型保育施設を設立したいと考えた時、まず行うべきことが設立場所の確保です。企業内に設置するのか、駅前などの企業外に設置するのか、土地を購入して施設を建設するのか、既存の建物を利用するのか。決めるべきことはたくさんあります。企業主導型保育施設は任意で地域枠の設定ができますが、基本的には働く従業員のための保育施設です。そのため、園児定員が少ないことが多く、新規園として建物を建設することはほとんどありません。

最も多いのが、既存の建物内の一部を保育施設として利用できるように設備を整える方法です。元々は保育施設ではなかった施設を保育園として利用する。そんなケースで必要となるのが、用途変更手続きです。用途変更が必要な場合には確認申請手続きを行うとともに、施設の工事が必要です。用途が違う建物に、保育施設として安全に使用するための設備を備えるための工事ですね。

注意したいのは、用途変更はどんな建物でもできるわけではないという点です。中には用途変更が不可能な建物もあります。例えば、用途変更の確認申請に必要な「検査済み証」や「確認済み証」がない場合。検査済み証はないけれど確認済み証がある場合は、手続きによって用途変更可能となりますが、確認済み証がない場合は用途変更ができません。

また、建築された時には適法であっても、その後の法律の改正によって法に則っていない建物となってしまった、既存不適格建築物もあります。この場合も、そのままでは用途変更ができません。現在の法律に適応した建物とする必要があるのです。既存の建物の用途変更を行い企業主導型保育施設として使用したいと考えた時には、用途変更が可能な建物であるか必ず確認しましょう。

用途変更が必要なケースとはどんな時?

ハテナ

用途変更の確認申請とは、違った用途で建設された既存の建物を、建築基準法に定められた特殊建築物として使用する時に必要な手続きです。特殊建築物とは保育所を含めた児童福祉施設や学校、劇場や百貨店、飲食店やホテルなどさまざまな用途の建物が当てはまります。一般の住宅ではない特殊な建造物ということですね。

企業主導型保育施設も、この中の児童福祉施設に含まれます。しかし類似用途間の変更においては、用途変更の確認申請が必要ありません。児童福祉施設は診療所の類似施設とされていますので、診療所から企業主導型保育施設の変更、または同じく児童福祉施設である助産院や乳児院から企業主導型保育施設へ変更する場合には、用途変更の確認申請は必要ありません。

また用途変更の確認申請には、床面積の規定もあります。児童育成協会が発表している平成30年の企業主導型保育事業の募集案内によると、床面積が100㎡を超える場合には用途変更手続きが必要です。ただし建築基準法の改定により、床面積が200㎡未満の建物においては用途変更の確認申請は不要となりました。企業主導型保育事業においても、今後変更されると予測されます。

用途変更の手続き方法

用途変更の確認申請を行うためには、まずは必要書類を揃えましょう。

  • 確認申請書一式(添付書類あり)
  • 建築計画概要書
  • 建築士など代理の人が行う場合は委任状
  • 既存不適格建築物報告書の写し(当てはまる場合)
  • 検査済み証
  • 確認済み証

確認申請書の添付書類には、配置図や各階の平面図、床面積求積図や立面図などが必要です。該当書類を揃えたら、建物が適法であるかの確認をします。適法であることを確認するためには、検査済み証の確認とともに建物の現状を把握し、法律と照らし合わせたチェックが必要です。適法である場合は、民間指定確認検査機関または各自治体の建築主事に確認申請の提出を行います。確認申請が受領されたらいよいよ工事に着工しましょう。工事が完了次第、各自治体の建築主事に完了届を提出し、用途変更手続きは完了です。

企業主導型保育事業の整備費助成においては、工事完了時に用途変更手続き確認申請と工事完了届の写しを提出する必要があります。また、消防署へ提出する防火対象物使用開始届の写しの提出も必要です。用途変更手続きを行い工事が完了した証明として、工事完了時に提出しましょう。

用途変更手続きは必要書類も多く、企業主導型保育事業の他の手続きとともに行うことへの負担も少なくありません。そのため、信頼できる建築士に依頼をすることも1つの方法です。

まとめ

保育士と親子

既存の建物を利用して企業主導型保育の運営を始める場合には、床面積などの条件によって、用途変更手続きが必要なケースがあります。まずは用途変更手続きが必要なのか、そして設立を予定している建物が用途変更手続き可能な建物であるかを確認しましょう。手続きや申請と聞くと、書面上の手続きのみであると誤解しがちですが、工事も伴う手続きです。子どもたちが、安全に安心して過ごすためにどんな設備を備えるべきなのか、またそのためにはどのような工事や設備の変更が必要かを視野に入れて、用途変更手続きを行うことをおすすめします。

ONE ROOF ALLIANCE ワンルーフアライアンス

ONE ROOF ALLIANCE ワンルーフアライアンス
現在、都内22の認可保育園と認定こども園を運営する「社会福祉法人東京児童協会」と、企業主導型保育園や学童保育の運営、海外への保育事業を展開する「株式会社ONE ROOF」が主体となり、新しい子育て社会を実現していくネットワークです。