日頃からたくさんの子どもや保護者と接する保育士ですが、つい関係性を忘れてしまい言ってはいけない言葉を発してしまうこともあるでしょう。
しかし、子どもや保護者によって受け止め方が異なるため、保育士が発した言葉で大きく傷ついてしまうことも多々あります。そのような事態を避けるためにも、あらかじめどのような言葉が危険なのかを知っておくようにしましょう。
この記事では子どもに言ってはいけない言葉を種類別に具体例も挙げながら解説していきます。とくに普段使う言葉は、少し意識するだけでも失言はほとんどなくなるため、ぜひ具体例も合わせて参考にしてみてください。
1.保育士が子どもに対して言ってはいけない言葉とは?
保育士が発した言葉で子どもが傷つきやすいケースは、以下の3つです。
- 否定的な言葉
- 脅すような言葉
- 命令口調な言葉
それぞれの言葉を具体例を挙げながらもう少し詳しく解説します。
1-1.否定的な言葉
1つめは、子どもの行動や考えに対して「否定的な言葉」です。
例えば、「〇〇くん(ちゃん)は、いつも〜できないね。」や「〜してはダメでしょ!」のような言葉があります。このような言葉は、子どもの自信や好奇心などを伸ばせなくなってしまうため、意識的に避けるようにしましょう。
とくにいたずらを常習的にする子であれば、すぐに「ダメ!」と頭ごなしに叱るのではなく、十分な時間を確保して本人と「なぜダメなのか?」という理由をしっかり伝えることが大切です。
そのため、否定的な言葉よりも「先生と一緒に〜ができるように頑張ろう」や「〇〇だから、〜してはいけないよ」のように言い換えてあげると、子どもも保育士からの言葉が受け止めやすくなります。
1-2.脅すような言葉
2つめは、子どもが言うことを聞かないことに対して使いがちな「脅すような言葉」です。
例えば、「言うこと聞かないなら〜させてあげない」や「もう〜をやらせてあげない」のような言葉は避けたほうが良いでしょう。この脅すような言葉を日頃から使ってしまうと、子ども自身が考えて行動する自立心を育めなくなってしまいます。
したがって、上記のような強い口調で訴えるのではなく、「〇〇ができたら〜しようね」や「またあとで〜して遊ぼうね」のように諭すような表現で伝えられると良いでしょう。
子どもたちは、少しずつ「自分が何をしたいのか?」などを自分で考えられるようになります。そのため、自分がやりたいと思っていることを優先して、保育士の言うことを無視してしまうケースも多々あります。しかし、そんなときだからこそ、子どもたちが自分で考えられるような言葉を選んであげることが大事です。
1-3.命令口調な言葉
3つめは、先ほどの脅すような言葉とシチュエーションは似ていますが、もっと強い口調にあたるのが「命令口調な言葉」です。
例えば、「早く〜しなさい」や「ちゃんと〜しなさい」という言葉が命令口調になります。ここまでに解説した言葉の中でも最も強い口調になるため、子どもたちにとってはかなり威圧的で怖いという印象を与えてしまいます。
さらに命令口調の言葉で言うことを聞かせると、子どもが自分で考えるタイミングがなくなり「やらせされている状態」になってしまうのです。また、常に保育士から「〇〇しなさい」や「〇〇して」のように指示を受けながら生活すると、自ら考えて行動できなくなる可能性もあるため、十分注意しましょう。
したがって、子どもに何かをさせるときは命令口調ではなく「早く片づけられたらいっぱいお外で遊べるね」や「どっちが早く片づけられるか競争だね」のように、その後の楽しみやゲーム形式など工夫して接してあげるのがおすすめです。
2.保育士は子どもを「怒る」よりも「諭す」のがおすすめ
保育士が子どもに接するときは、必ず「怒る」よりも「諭す」もしくは「叱る」ようにするのがおすすめです。なぜなら、怒るときは本人の思いや感情が入ってしまっているため、子どもの可能性を伸ばしていく保育では、あまり向いていません。
むしろ、子どもに対して怒ると威圧的に感じてしまい、大人に対して恐怖を感じるようになってしまいます。そのため、言うことを聞かなかったり、いたずらをしてまったりする子に対しては、「なぜやってはいけないのか?」や「なぜ今やるべきなのか?」という明確な理由も含めて伝えることが重要です。
ただし、大けがや重大な事故につながってしまうような場合には「怒る」ことも大事ですが、普段の生活の中で子どもたちを成長させるには、感情を込めて怒るよりも子どもの気持ちを受け止めたうえで伝える「諭す」やり方をおすすめします。
3.保育士が保護者対応するときに注意したい言葉3つ
保育士が気をつけなければいけないのは子どもに対してだけではなく、保護者対応をするときも十分に注意しなければなりません。とくに預かっている子どもの情報をやり取りしているうちに仲良くなって、徐々に言葉遣いが崩れていく...というパターンも多いです。
そのため、以下に挙げる3つ言葉については、意識して避けるようにしましょう。
3-1.家庭の事情を無視した言葉
保育士は、保護者対応をするときに可能な限り家庭の事情を把握しておくことをおすすめします。なぜなら、事情を知らないと勝手な先入観で言葉を発してしまう可能性があるからです。
例えば、普段子どものお母様が迎えに来られるため、たまたま仕事の関係でお父様が迎えに来られたときに「今日は珍しくお父様がお迎えなのですね。」のように言ってしまうケースがあります。
一見、問題なさそうですが、普段からお母様がお迎えに来ていることをお父様も把握しているため、場合によっては不快に思われてしまうこともあるでしょう。つまり、このケースでは、共働き世帯に対しての配慮が必要になるということです。
とくにこの共働き世帯については、内閣府が発表している「男女共同参画白書(概要版)」では、平成10年頃に共働きをしていた世帯が約950万世帯だったのに対し、平成29年には約1,200万世帯にまで増えているというデータを出しています。
引用:男女共同参画白書(概要版) 平成30年版 | 内閣府男女共同参画局
このように日々、子育てのやり方や保護者の働き方は変わってきており、保育士は可能な限り家庭の事情を考慮した発言をしなければなりません。また、共働きなどの働き方以外にも片親などの家族構成についても十分配慮しておかないと、思わぬトラブルにつながる可能性もあります。
したがって、保育士同士が常に子どもや保護者の情報を共有しながらその子どもや保護者に適した対応を心がけていくことが大切です。
3-2.間接的に子どもを否定する言葉
お迎えのときなどで保育士が保護者と対面するときに、今日あったことや状況報告をする機会があります。この状況報告のときに子どもの成長や性格を否定するようなことを言わないように注意しましょう。
具体的には、「何かあると、すぐに怒りますね」や「わがままで大変でしょう」のような言葉です。これは今日あった出来事の報告とも受け取れますが、保護者にとっては子どもの性格や子育ての状況が良くないと言われてしまっていると感じてしまう方もいます。
したがって、単に「すぐ怒りますね」という言い方をするのではなく、「〇〇をすると、怒りやすいのですがご家庭ではどのような様子でしょうか?」など保育園での状況を報告をしつつ、家庭での様子を伺うと良いでしょう。
また、ただ家庭での様子を伺うのではなく、保護者から情報を得られたら、今後の具体的な対応をその都度保護者と一緒に決めるようにすると信頼関係も築けます。
ちなみに発達障害などの兆候については、医師からの診断がない限り保育士から言及しないようにしましょう。とくに子どもたちと長く過ごし、経験のある保育士の場合は発達障害の有無を見分けられやすくなりますが、同時にデリケートな部分でもあるため、保護者から相談されない限りは触れないように注意しましょう。
3-3.保護者の意見をないがしろにする言葉
場合によっては保護者から保育士側に対して意見をいただくこともあります。しかし、その意見がマイナスな意見だったときに、いただいた意見をないがしろにして全否定するような言葉で返すことは避けた方が良いでしょう。
例えば、「子どもが先生から強く怒られたみたいなのですが...」のような意見を保護者からもらったときに「そのようなことは絶対にありません」や「そんなはずはないと思います」などと答えてしまうと保護者の意見を全否定することになります。
したがって、実際は起きていない状況であっても一旦、保護者の意見を受け止めて今後どのように対応していくのかを丁寧に伝えることが大事です。保護者も我が子が保育園で楽しみながら成長してほしいと願っている方がほとんどなため、言われた意見に対して反発するよりも協力しながら保育ができるように意識した言葉を選ぶようにしましょう。
4.保育士は相手の状況を理解したうえで言葉を選ぶことが大事!
今回は保育士が子どもや保護者に対して避けたほうが良い言葉をシチュエーション別に具体例も交えて解説しました。
保育士にとっては、子どもたちを教育するための言葉だったとしても、受け止める側からすると強い言葉だったり、傷つく言葉だったりするということを覚えておきましょう。さらに現在では、さまざまな家庭環境や身体的な問題を抱えている子どもや保護者もいます。
したがって、保育士は子どもや保護者の対応をするときにどのような状況にあるのかを可能な限り把握しておくようにしましょう。事前にどのような状況下にあるのかが分かっていれば、自然と適切な言葉選びができるようになります。
ぜひ、保育士といういわば教育者として発言する前に「その子にこの言葉は適しているか?」や「この保護者にはこっちの言い方のほうが良いのではないか?」など相手が置かれた状況に配慮した言葉を選べるように意識しましょう。