保育士の新卒採用手法はスケジュール管理と逆算が重要!採用時の注意点も解説

保育園にとって、新卒の保育士を採用することは長く園を運営していくためにもとても重要なことです。しかし、厚生労働省が発表している「保育分野における人材不足の現状」では、平成25年度時点で9割以上の都道府県が保育士の新規求人倍率を1倍を上回っています。

保育分野における人材不足の現状①

出典:保育分野における人材不足の現状①|厚生労働省

とくに採用担当者の方であれば、なかなか保育士が確保できない現状を肌で感じているでしょう。そこで、この記事では保育士の新卒採用における効果的な手法を解説します。

また、新卒の採用手法を行うにあたって具体的なスケジュールから注意点まで解説しますので、これから新卒の保育士を採用していきたいと考えているのであれば、ぜひ最後までご覧ください。

1.保育士の新卒採用手法とは?

保育士の新卒採用に効果的な手法は、大きく2つあります。

  • 学生が利用する就活サイトに求人を掲載する
  • 学校と連携して求人を紹介してもらう

新卒採用に重点を置くのであれば、学生の目にとまるところに限定して求人の掲載もしくは紹介してもらうことが大切になります。とくに保育士の場合、学校で保育士資格を取得してからそのまま保育園に就職する学生も多いため、学校と連携できるとかなり強力です。

それでは、それぞれの手法についてもう少し具体的に解説していきます。

1-1.学生が利用する就活サイトに求人を掲載する

以前までは就活用の合同説明会や学生自身がアポを取ってインターンに参加するなどの方法が主流でしたが、今ではほとんどの就活学生は「就活サイトに登録」することが多いです。

以下は、「就職活動中にすることは?」という質問に対してのアンケート結果になります。

就職活動中にすることは?のアンケート結果

出典:就職活動中にすることは?のアンケート結果|株式会社ネクストビート

上記の結果からもわかるように現在では、就職活動用の合同説明会に参加してエントリーするよりも就活サイトに登録をして就活をする学生が増えているのです。したがって、保育園側としても新卒の保育士を採用したいのであれば、就活サイトへ求人情報を掲載することが必要になるでしょう。

ただし、就活サイトへの登録と合同説明会への参加に次いで、「園のホームページを閲覧」という回答も多くなっています。就活サイトなどの外部サービスに注力することも大事ですが、自社の保育園のホームページにも保育士向けの募集要項を掲載しておくとさらに効果的です。

1-2.学校と連携して求人を紹介してもらう

保育士資格を取得するには、厚生労働省が指定する保育士養成学校を卒業する方法と受験資格を持った状態で保育士試験を受験し、合格することで取得できます。しかし、新卒の保育士は、ほとんどが保育士養成学校に指定されている専門学校もしくは大学を卒業することで、保育士資格を取得する学生が多いです。

したがって、保育士資格を卒業と同時に取得できる保育士養成学校とうまく連携できれば、優先的に求人情報を学生に紹介してもらえたり、学校内に求人を掲載してもらったりするため、効率よく新卒の保育士を採用できるでしょう。

また、保育士資格を取得するためには、保育実習を行う必要があることからあらかじめ保育実習生の受け入れも検討しておくと、園の雰囲気を学生に知ってもらいつつ、採用にもつなげられる可能性が高いです。

2.新卒の保育士を採用するには就活スケジュールを把握しましょう

新卒の保育士を効率よく採用するには、学生の就活スケジュールをあらかじめ把握しておき、逆算して求人を掲載すると募集しやすくなります。とくに保育士資格を取得する学生の場合、前述したように保育実習を終了していないと本格的に就活がスタートできません。

そのため、保育士資格の取得を目指している学生が就職しやすいような工夫が必要になるでしょう。

2-1.保育実習が終了時期に採用できるよう準備する

先ほども述べたように保育士資格の取得をする学生を新卒採用として受け入れる場合、一般的な就活生とは異なり保育実習期間が終了する時期を狙う必要があります。したがって、保育士の採用担当者の方は、以下の就活スケジュールを把握しておくと適切なタイミングで求人を掲載できるでしょう。

以下は、4月入社を想定した学生の就活スケジュールです。

2-1-1.1月〜2月:業界研究および就活情報の収集

ほとんどの学校が4月から学年が変わりますが、学生の就活は春休みを活用することが多いため、学年が変わる前の1月〜2月から動き始めます。

とくに1月〜2月の段階では、ほとんどの企業がまだ新卒採用向けの求人を出していないため、学生は自身が就職する業界の研究および就活情報の収集がスタートします。しかし、1月〜2月の段階では、学生自身も学年が変わっていないため、新卒採用を行うための準備期間に充てましょう。

2-1-2.3月〜4月:合同もしくは個別説明会への参加

3月〜4月になると、それぞれの学生の学年が上がるため、本格的な就活がスタートしていきます。このあたりから各企業の合同もしくは個別説明会が開催され、新卒採用に向けて囲い込みが始まってくるでしょう。

一方、3月〜4月は保育園としても園児の入れ替わり等で繁忙期に差し掛かっていることが多いですが、保育園としての活気が一番伝わりやすい時期でもあるため、4月に入った頃に新卒採用向けの求人を掲載すると効果的です。

「他の企業も求人を出すから埋もれてしまうのでは?」と疑問に感じる方もいると思いますが、やはり学生としては早く内定もしくは就職する業界を決めたいと考えています。そのため、他の時期よりも説明会の参加やエントリーしやすくなることから3月〜4月にかけて求人情報を掲載するのがおすすめです。

ちなみに以下は、ProFuture株式会社のHR総研と楽天グループ株式会社「楽天みん就」が2022年卒の学生を対象に行った就職活動におけるプレエントリー時期になります。

2022年卒学生の文系・理系別プレエントリー時期の調査結果

2022年卒学生の文系・理系別プレエントリー時期の調査結果2

出典:2022年卒学生の文系・理系別プレエントリー時期の調査結果|HRプロ

上記のグラフからわかるように学年が切り替わる3月前後にプレエントリーをする学生が多いということがわかります。このようなデータからも3月〜4月あたりに求人を掲載するのは効果的であると言えるでしょう。

2-1-3.6月〜10月:保育実習期間

前述した3月〜4月での求人掲載がうまくいかないまたは繁忙期によってスムーズな採用ができないという場合は、10月あたりに再度求人を掲載しておくと良いでしょう。理由は、先ほどから繰り返しになりますが、保育士資格を取得する学生は必ず保育実習に参加しなければなりません。

さらにその保育実習期間は、およそ10月あたりには終了している可能性が高いことから実習期間が終わった時点で学生がエントリーできるよう求人を出しておけば、新卒の保育士を採用できる可能性は高くなるでしょう。

3.新卒の保育士を採用するときの注意点3つ

ここまでで保育士の新卒採用における手法と求人情報を掲載する具体的なタイミングについて解説をしました。しかし、今ではスマートフォンなどを利用してさまざまな情報が手に入るため、単なる求人情報を掲載しても選択肢から除外されてしまいます。

したがって、新卒の保育士を採用したいと考えたときは、以下の3点に注意して求人情報を掲載するようにしましょう。

3-1.保育士が利用できる制度などを細かく説明

1つめは、保育士が利用できる制度を可能な限り細かく説明することです。保育士という職業は、昔から「労働環境が悪い」や「賃金が少ない」という声が多かったのですが、今では以下のような保育士を支援する制度や取り組みが充実しつつあります。

  • キャリアアップ研修制度
  • 保育士の賃金アップ(2022年から政府が実施)
  • 各自治体による保育士支援サービス

しかし、上記のような制度について知らない学生も多いため、間違ったイメージのまま保育業界への就職を避けてしまうケースも多いです。したがって、合同説明会もしくは個別面談の場面で保育士が受けられる支援制度などを詳しく説明できると、保育士へのハードルも低くする効果が期待できるでしょう。

3-2.研修期間を充実させてサポートをする

保育士として就職してから退職してしまうケースの理由として、以下のように厚生労働省が発表しています。

保育を取り巻く状況について

出典:保育を取り巻く状況について|厚生労働省

上記のグラフから分かるように退職理由として多いのが、「職場の人間関係」や「仕事量が多い」という理由が上位です。したがって、新卒採用であれば保育士の仕事がどのようなものであるかはまったく分からないため、研修期間を充実させて全面的にサポートしてあげることが大切でしょう。

さらに研修も機械的に行うのではなく、新人の保育士とすでに勤務している保育士がスムーズにコミュニケーションが取れるように工夫できると、信頼関係も生まれ人間関係による退職は最小限に防げる可能性が高いです。このように保育士の退職理由を把握しておくことで、保育士に長く勤務してもらうためにどのような工夫をするべきかを考えておきましょう。

3-3.今後のキャリアイメージを持たせる

前述した保育士の退職理由の中に「給料が安い」という項目もありました。これは支給される給料が安いという点も原因にありますが、キャリアアップによる昇給や昇進というキャリアイメージが持てていないことも大きな原因です。

したがって、現在の保育士には「キャリアアップ研修制度」や「各自治体のサポート事業」などがあるため、努力次第で給料を上げることができるという点をしっかり伝えましょう。とくに新卒の保育士にとって、「保育士に就職したけど将来的に大丈夫かな?」と考えてしまう人は多いです。

そのため、前述した各種支援制度の説明や昇給方法をしっかり伝えておくことで、働くことへのモチベーションも高めることができます。

4.保育士の新卒採用には逆算して準備が必要!

今回は、保育士の新卒採用における具体的な手法から新卒採用を行う際の注意点について解説しました。

新卒の保育士を効率よく採用するには、求人を出すタイミングや求人情報の内容などさまざまなことを逆算して出していく必要があります。そのため、保育園の採用担当者の方は、あらかじめ学生の就活スケジュールを把握しておき、適切なタイミングで求人を掲載するようにしましょう。

したがって、これから新卒の保育士を採用していきたいと考えているのであれば、常にスケジュールを逆算しながら採用の準備を進めていくことが重要になります。

ONE ROOF ALLIANCE ワンルーフアライアンス

ONE ROOF ALLIANCE ワンルーフアライアンス
現在、都内22の認可保育園と認定こども園を運営する「社会福祉法人東京児童協会」と、企業主導型保育園や学童保育の運営、海外への保育事業を展開する「株式会社ONE ROOF」が主体となり、新しい子育て社会を実現していくネットワークです。