企業主導型保育について調べていると「企業枠」という言葉を目にするかもしれません。一般的に企業枠とよばれているのは、保育事業者の社員の子どものための「従業員枠」のことです。通常、認可保育園では地域の子どもが主な園児の対象ですが、企業主導型保育ではこの従業員枠が定員の主要な構成要素となります。
そこで今回は、企業が保育事業者となる保育所における定員の定義をご紹介します。企業主導型保育に特有の共同利用契約における従業員枠についてもご説明しますので、その違いも確認してみてください。
企業主導型保育の定員
企業が保育事業の主体となる場合に把握をしておきたい項目のひとつが定員の定義です。事業ですから採算がとれるように園児を確保しなければなりませんし、助成も園児の数に応じて支給される部分があるため、定員を把握した上で計画することはとても重要です。
企業主導型保育の定員の特徴は、従業員の子どもで100%充足しても良い、という点です。つまり従業員枠(企業枠)=定員として、企業が自社の従業員のためだけに設置できる保育所ということになります。
ただし、企業主導型保育では「従業員枠」(企業枠)の定義は自社従業員にとどまりません。保育事業を複数企業で行う「共同設置」や他の法人と従業員枠を共有する「共同利用契約」を結ぶ場合には、その共同事業者や共同契約者の子どもも従業員枠の対象とします。
また、地域の子どもを受け入れる地域枠を設けることは可能ですが、その割合は50%が限度とされています。
詳しくはこちらの記事をご参考ください。⇒企業主導型保育における地域枠とは?その重要性や注意点をご紹介
ただし従業員枠(企業枠)であろうと地域枠であろうと、保護者が保育の必要性を満たしていなければ子どもを預けることはできません。企業主導型保育では認可並みの補助を受けられますが、保育を受けられる対象もこれに準ずるものなので注意が必要といえるでしょう。
事業所内保育との定員設定の違い
同じく企業が事業者となる事業所内保育は定員についてどのような違いがあるのでしょうか。認可保育である事業所内保育は地域枠を定員の1/4程度は確保しなければなりません。つまり地域の子どもの募集は必須となります。そして従業員枠(企業枠)については保育事業者である企業の従業員しか認められません。
事業所内保育では必ず地域の子どもを受け入れなければなりませんから、自社従業員のみならず地域全体を視野に入れた運営が望まれるといえるでしょう。他方、企業主導型保育では従業員枠による園児数の予測や企業同士の連帯によって安定的に園児の数を確保することが推奨されており、地域枠に過度に頼ることはできません。
それではさらに企業主導型保育の従業員枠について、事業者と契約者の従業員枠についてそれぞれ確認しておきましょう。
事業者の従業員枠(企業枠)
まず企業主導型保育の事業者従業員枠ですが、単独で保育所を設置した場合には自社の従業員の子どものみで定員を構成することも可能です。つまり、企業ごとの多用な働き方に柔軟に対応する保育施設を作ることが可能なのですが、あくまでも「保育の必要性」は満たす必要があります。
この保育の必要性については、保護者の従業員はもとよりその配偶者についても要件を満たす必要があります。具体的には就労や妊娠、介護など保育を必要とする理由を説明する在職証明もしくは保育認定の提出が必要です。
契約者の従業員枠(企業枠)
それでは共同契約の場合の従業員枠はどうでしょうか。まず共同契約を結ぶためには子ども・子育て拠出金を負担する企業が保育事業者と共同利用の契約を結ぶ必要があります。
そして契約に際してはあらかじめ契約人数を明らかにします。この契約における利用定員を超える場合は従業員枠としてはみなされません。ただし全体定員に満たず、地域枠を募集している場合には受け入れが可能になります。
こちらの記事もご参考ください。⇒企業主導型保育の共同利用契約書とは?共同利用のメリットもご紹介
定員の構成をあらかじめ決めておくという点については保育事業者と共同利用契約者の双方が理解をしている必要があるといえるでしょう。契約を取り交わす際の人数によって、定員の構成が変わってきますし、預け入れができないという事態も考えられるためです。企業主導型保育では従業員枠が確保できるかどうかが事業存続の可否に大きく関わりますので、計画の段階から定員構成の計画はある程度固めておきましょう。
まとめ
今回は主に企業主導型保育における従業員枠(企業枠)についてご紹介しました。事業者である企業がその従業員の子どもを預かることを目的とした企業主導型保育では、定員の全てを従業員枠で満たすことも可能です。さらに他企業と連帯することにより、共同利用契約に基づく従業員枠を設定し、これを加えて従業員枠(最小50%)を充足することも検討できます。
ただし注意しておきたいポイントとして、認可なしの保育事業ではありますが保護者が保育の必要性を満たす必要はあります。自社の従業員であっても要件を満たさない場合には施設を利用出来ないので、この点も踏まえて利用者の需要予測を立てるように心がけましょう。